豚だった男
第4ブー 2匹の会話

 社長は、中島の家に上がると、服を全て脱ぎ、四足歩行の状態になった。  「ブーブヒー!」(社長も豚だったんですか?) 「ブーブーブー!ブヒブヒ!」(そうだ。人間のフリをして50年以上生きてきたが、俺は豚だ!) 「ブーブーブー!」(ま、まさか……) 「ブヒブヒブーブーブヒー!」(だから、俺には君の気持ちが分かる!俺は、君の味方だ!) 「ブブー!ブヒー!」(しゃ、社長……)  中島は、嬉しくなって、社長のお腹に寄り添い、顔をスリスリした。社長も、中島のお腹に顔をスリスリし、2匹の豚は、じゃれ合った。  あっという間に2匹は打ち解けた。時間を忘れて、いろんなことを話した。  人間のフリをする苦悩、豚が抑えられなくなった時のこと、好みの豚のタイプの話、などなど、豚トークに花が咲いた。  やがて、社長が今までどうやって生きてきたのか、という話になった。  社長は、豚の言葉で、こう話した。  俺が豚だと宣告されたのは、10歳の頃だ。運動会のリレーで、抜かれないようにと必死で走っていると、気づけば、四足で走っていた。同級生たちは、俺のことを面白いと笑ったが、運動会には、息子の応援に来ていた大学病院の医者もいて、その医者に、すぐに病院に来るよう言われた。そして、俺は病院で検査を受け、豚だと宣告された。それから俺は、その医者によって、ペットショップに渡され、俺はペットとして生きることになった。すぐに飼い主が見つかったが、その飼い主は、俺のことを殴ったり蹴ったりした。虐待ってやつだ。俺は、すぐに逃げ出した。それから自分でダンボールに、拾ってください、と書き、そのダンボールの中に入って、拾われるのを待った。何ヶ月か経って、ある家族が、俺を拾ってくれた。その家族は、父と母と二人の娘と一人の息子の5人家族だった。その家族は、俺のことを本当に大事にしてくれた。ペットとしてではなく、一人の家族として俺を扱ってくれた。俺は、心の底から幸せを感じた。だが、その幸せな時間は、突然終わってしまう。ある男が、その家族を皆殺しにしたのだ。俺は、その男の顔をハッキリ覚えている。俺は、警察に事情を説明した。だが、警察は、ペットが人間の言葉を話すわけないと言って、俺の言うことを信じてくれなかった。まあ、考えれば当然だよな。結局、事件は未解決のまま終わって、奴は逮捕されなかった。それから俺は、奴に復讐することを誓った。復讐のためにできることは、全てやった。そして、40年が経って、やっと奴と対面できる機会ができた。明日、俺は、奴に復讐をする。  社長の目から涙が出てきた。 「ブヒブヒ!ブーブー!」(もしかして、会社を立ち上げたのって、復讐のためなのですか?)  中島に訊かれた社長は、 「ブーブー!ブヒーブヒーブー!ブーブー!」(その通りだ。奴は、ある大企業の社長をしている。しかし、それ以外の情報はわからない。奴に近づくには、会社を立ち上げて、奴と同じ業界に入るのが一番だと思ったんだ)  と答えた。 「ブーブーブヒ!」(明日の復讐、成功するといいですね!) 「ブーブーブー!ブヒブヒブヒ!ブー!」(ありがとう!俺は、きっと逮捕されるから、もう君とは会えないだろう。すまないな。せっかく君と仲良くなれたのに)  社長は、そう言うと、、二足歩行の状態に戻って、服を着た。人間に似た豚が、豚に似た人間に変わった。 「ブーブー!」(じゃあな!頑張って生きろよ!)  社長は、そう言って、中島の家を出て行った。

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水瀬そらまめ 2020/07/28 09:35

すごい展開になって、びっくりです!!!