「宇佐美さんと別れるの?」 「そんなことはない。恋人だ」 「私は遊び?」 「そんなんじゃない。君も大事にする」 「バレないかしら?」 「大丈夫」 「明日も会うのよ。どうしよう」 「平気な顔してろ。向こうは気づかない」 「あなたさすがね。他にもいるでしょ?」 「女性?知り合いならいる」 「ふーん。知り合いね」 彼女とのセックスも良かった。またしたいな。 「明日また大学で会いましょう」 次の日絹子と会った。 「石黒さんは?」 「なんで石黒さんなの?」 「友達だろ?」 「うーん、友達というより学部仲間」 「なんでこの間一緒にいた?」 「彼女におごったもらったの。お礼に。ねえ、なんで石黒さんなの?」 怒ってる。 「この間キャンパスで偶然会ったんだ」 「そうなの」 「それで色々話した?」 「学内の外で?」 「?!…」 「一緒に出てくの見たわよ」 「……靴を買うから付き合ってくれと」 「嘘よ。彼女と何処へ?」 「六本木ヒルズ」 「ヒルズ?」 「僕は断ったんだけど、彼女が」 「強引に?」 「そう」 「何考えてるの?」 「…すまん」 「もう知らないわ」 と、向こうを向いて行ってしまった。これは不味い。見られてたとは。 「こりゃ終わりだな」 僕はそう悟った。 石黒さんに電話した。 「バレちゃった!」 「一緒に出てくの見られたようだ」 「あらまあ知らなかったわ」 「今どこ?」 「授業よ」 「授業中に電話してるの?」 「一番後ろの席だから気づかれない。でも外出るね」 「ここの窓から見えるわ!上向いて!」 僕は手を振った。 「どうするの?」 「別れることになるだろう。かなり怒ってる」 「謝ってもダメなら、もう恋人になろうよ」 「いいよ」 「じゃあ、教室の前で待ってて」 僕は建物の中にはいって、階段で3階に上がった。 それで教室の扉の前で待機。 ドアが開いて授業が終わったようだ。 「よお!大変なことになったね。私のせいだ」 彼女が出てきて言った。 「もう手遅れだ」 するとメールが来たようだ。ともりからだ。 〔午後の授業サボるわ。どこかに集まらない?〕 「午後は何かある?」 「何もないわ」 「女友達が集まろうって。一緒に行く?」 「どういう人?」 「高校の同級生。違う大学行ってて、それでね、同居人を探してる」 「いいわよ。つきあうわ」 と千代田区のお茶の水のカフェ。かなり古い店内。なんでこんな店をえらんだのか。 「私明治大学だから。ここかなりの老舗なの」 「まあいい。なんか話でもあるの?」 「ないけど、そちらは新しい彼女?」 「そう、石黒メイさん」 「こんにちは、はじめまして」 「ねえ、あなたすごいわよ。この人も候補よ」 「何が?」 「同居人よ。お一人で住んでます?」 「誰でもいいんじゃないの?」 「いえ、実家暮らしです。家は板橋区」 「同居人を探してるのね。私と住まない?」 「うーん、その前に白樺さんをよく知らないと」 「そうだよ。やみくもに声かけても」 「私は白樺ともり、楢橋くんとは高校が同じなの」 「ここに来る間にいろいろ伺いました。男性にあまり興味がない?」 「そう。できればずっと一緒に住んでくれる人を探してます」 「お婆さんになっても?」 「はい」 「それほんと?そんな人居ないよ」 「でしたら遠慮しますわ」 と、石黒さん。 「そうですか。残念」
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