「小説投稿サイトを作りたい」 中村航さんにそう言われ、唸りました。 簡単にできるものじゃないですし、もし作ることができても、小説投稿サイトってすでにたくさんあるじゃないですか。ぼくでも聞いたことあるような大きいサイトが、いくつも。 それに小説投稿サイト以外でも、noteが出版のサポートなどを始めたりしていました。だから、 「noteに(小説を)書けばいいんじゃないですか? noteじゃダメなんですか?」 と言いました。だけど、noteじゃダメみたいでした。違うんだそうです。 中村さんがやりたいことをお聞きしながら、 そうかあ、それじゃあnoteじゃだめかあ いやいや、それはnoteでいいじゃないか いや~、やっぱりnoteではダメかあ いーや、それは完全にnoteや とミルクボーイ的な自問自答を繰り返しましたが、最終的にnoteじゃダメということになりました。 どうしても自分で小説投稿サイトをやりたいと。 じゃあサイトを作るにしても、ぼくだけで作るのは無理なので、開発会社に発注した方が早いし、いいものができますよと進言しましたが、よくわからないところに頼みたくないのと、お金がそんなにないので、それもしたくないとのことでした。 わがままか! どうしようと悩み、だれか適任な人を紹介して、そちらに話を振って不安を分散させたいと考えました。 ある日の打合せに、開発会社をやっている友人に来てもらいました。ひょっとしたら、興味を持ってやってくれるかもしれないと期待したからです。しかも安く。 こちらのやりたいことを中村さんが説明すると、 「noteじゃダメなんですか?」 ですよねと思いました。Web業界にいたら、そう考えるよなと思いました。 いろいろアドバイスもいただきました。お金についても。この手のサイトを1から作ったら、数百万から一千万は必要だろうと。ぼくも会社で開発を発注していたこともあったので、その費用には納得しました。ますます難しそうだと思いました。 また別の日に、別の友人に打合せに参加してもらいましたが、 「noteじゃダメなんですか?」 ここでも出ました。ぼくはもうその頃、説得する側に回っていて、 「いまの小説投稿サイトは、異世界転生とかがメインなので、一般文芸の小説投稿サイトをやりたいんです」 と言っていましたが、本業が多忙で協力できないんですよね、と断られてしまいました。 しかし、毎回話しているうちに、どういう方向性の小説投稿サイトにすればよいのかが、なんとなく見えてきた気がしましたね。 やっぱり難しい。そろそろ中村さんも諦めるのではと思っていたのですが、まだ諦めませんでした。 打合せのあとは、必ず飲みに行っていました。打合せの時間の何倍もの時間飲みました。 毎回ご馳走していただいて恩を感じていて、あるとき、酔った勢いもあり口を滑らせてしまいました。 「じゃあぼくがやりますよ。でも、いつできるかわかりませんよ」 「おお! ついに山が動いた!」 中村さんは、ぼくならできると信じていたようです。 ぼくが昔にサイトを作っていたことがあったから、小説投稿サイトもできると思っていたらしいです。たしかに作っていましたが、昔といまでは違います。昔は簡単にできたものでした。ぼくのスキルは昔で止まっていて、いまはAWSとか使ってサーバーレスで構築するんでしょ。その辺のこと、ほとんどわかりませんでした。 それで、技術書などを買ってサイト作りに取り掛かるのですが、なかなか進みませんよね。勉強するところからですから。 で、1ヶ月以上が経過して、このままじゃ進まないなと思ってどうしようと思っていたら、そういえば、会社の後輩に開発のHさんという人がいて、たまに話したりしていたので、あの人ならできるんじゃないかと思って、彼に声をかけてみました。 「中村航という小説家がいて」 と切り出しました。Hさんは自他共に認めるオタクで、中村さんがストーリー原案や作詞を担当している「バンドリ!」のライブもすでに見ていたということで、「あの中村航ですか」と。開発もできますよと、あっさり言いました。いままで何だったんだというぐらい、あっさりしていました。 すぐに中村さんに「開発やってくれる人が現れました!」と報告して、彼はバンドリのオタクですと伝えると、オタク心を満たす様々な働きかけが実施され、動機づけされ、開発が軌道に乗ることになりました。 コワーキングスペースへ毎週末行って、開発を進めました。それでも作れば作るほど、あれをしなくてはというのが発生して切りがなく、年を越して2020年になり、もう思い切ってこの辺りで公開しようと決めました。公開後に機能追加していけばいいと。 2020年の3月末、ステキブンゲイは、いきなり公開されました。
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