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「そろそろ縺ゅ≠縺偵£縺ー縺医€√#」 「そうだね。もう縺剃コ区・ュ縺ゅb縺弱g縺�g縺�ク雁ーセht」 「いずれにせよ私たちには荳狗畑譏ッ縺。繧上〒縲;B雜翫∴縺Hhbm」 「それにしても、この言語縺ッ縺九↑繧贋スソ縺�d縺吶>縺ュ」 「えぇ、とてもそう諤昴≧繧上�縺ゥ縺�@縺溘▲縺ヲ縺昴≧縺ェ繧九�縺�縺九i」 「じゃあ、決豎コ螳壻コ矩��→縺�≧縺薙→縺ァ縺�>縺ョ縺九@繧�」  そこで会話が途切れる。「Frozen」の異名を持つマティルドゥが、あと三秒後にやって来るはずだからだ。 「状況の報告を」  マティはいつも通りブラックコーヒーを片手に、きっかり三秒後に現れた。  一人が言う。元デバッガーは、見事に試合を勝ち進んでいることを。  一人が言う。猫憑きは、相当苦戦しているようだということを。  一人が言う。昨日は少し運動不足のようなので、今日はしっかりと動くことをオススメする、と。 「あぁ、ありがとう。気にしておく」  一人が言う。そろそろ見限らなければいけない時期に入ってきているであろうことを。  その報告に対し、マティは努めて反応を鈍らせる。タイミングを決めるのは、私自身でなければいけない。 「報告は以上ね」  その言葉を最後に、マティは挨拶もなく姿を消した。バーチャル会議室からログオフしたのだ。 「ふふふ。彼女は驤阪¥縺ヲ蜉ゥ縺九k」  そう言われていることをマティが知るのは、もう少し先の話だろう。   「なぁ、レイラ」  カイはベッドの上に横たわり、携帯ゲーム機をいじっていた。  カイが動かしていたものは、いわゆるβ版といわれるゲームであり、遊ぶというよりも試用として提供されるものだ。デバッガーでありe-sportsの世界王者たるカイの元には、そうしたテストを依頼されることが公私共に少なくない。  ゲームから目も手も離すことなく、カイは問いかける。頭の中で話すのはどうも慣れないため、周りに誰もいない時はレイラとの会話の際にも声を出すことが多い。 「プロトタイプのレイラとそれ以外の奴らの違いってなんなの」 「随分と直接的な物言いですね」  レイラの言葉はぶっきらぼうではあるが、言葉の響きほどに棘がない。一方で、艶というものもない。最初の頃は随分と棒読みで高飛車な奴だなと思っていた。だが、彼女はあくまでもプログラミング上の反応を示しているに過ぎないのだろうと思うようになってから、少しだけ会話がしやすくなった。 「ロボット物のアニメとかにもさ、よくプロトタイプだとか量産型だとか出てくるけど、だいたい量産型の方が雑魚いじゃん。ってことはさ、レイラの方が優秀だったりするの」 「優劣の差について何を基準とするかにもよるのでしょうが、もし仮にプロトタイプである私一人と量産型として誕生した彼ら個人——便宜上、彼と表現しますが、実際には無性別個体であることはご認識の通りです——に焦点を当て比べた場合において、総合的な性能差でいえば、彼らの方が強力であると言わざるをえないでしょう。しかし、特出すべき点を比較した場合においては——」 「だぁ。話がまどろっこしい。要するに、あっちの方が強いってことだろ」 「強さというものの定義にもよりますが、強さとは環境や条件等によっても——」 「だーかーらー、それが面倒ちいって言ってんの。プロトタイプなんて、物語の中なら鍵となる存在で、最強だったりするわけじゃん。それを手に入れるのってだいたいが主人公だしさ。レイラもそういう奴なのかなー、って期待しちゃったの」 「ご期待に添えなかったようで申し訳ございません」  レイラが恭しく謝る。「慇懃無礼って言葉、知ってる」とカイが問うと、「慇懃無礼とは、辞書によると——」とレイラが文字通りの意味を返そうとする。カイの溜息とレイラの声が脳内で混ざり合っていた。  カイはそのまま枕に頭を預け、ゲームをベッドの脇に置く。「つまんねぇゲーム……」と呟いて、眠りに落ちる。  マティがバーチャル会議を終え、カイが眠りに落ちようとしていたちょうどその時、猫とエレナは異常事態を察知していた。おそらく、この異常性に気付いていた者は、エレナを除いては存在していないだろう。 「ねぇ、グーグー。ちょっと」  エレナは「グーグー」とイビキをかいていた猫を叩き起こす。同時に、イビキをかくAIという存在を許容している自分がいることに、少しばかりの失望も抱く。 「にゃんにゃ。ボクはロングスリーパーにゃのにゃ。もう少し寝かせてほしいにゃん」  コンピュータにはスリープモードという設定はあるが、自ら寝かせろと催促するタイプは、そういまい。そして、当然ながらエレナはそれを良しとはしない。 「いいから起きやがれってんだ。このクソ猫」  多少は口調も荒くなる。それも致し方ないことだ。緊急事態だ。 「にゃんだよ。まったくもって猫づかいの荒いご主人様だにゃあ」 「そういう台詞は、実際に役に立ってから言ってくれるかな」 「にゃにをー。ボクが全く役ににゃっていにゃいかのような物言いだにゃ。聞き捨てにゃらにゃいにゃー」  猫は自らの爪を立てて威嚇をする。牙を剥き、毛を逆立てる。無論、それもイメージでしかない。実際に、猫がアタシを攻撃することなどできやしない。少なくとも肉体的な側面においては。 「で、いったいにゃんだと言うのにゃ」  エレナは猫に対し、無言でモニタを見るよう促す。実際にはモニタなどなくとも猫とエレナの脳内で連携は可能だが、エレナは「モニタを見る」という行為によって、自分と猫が同化していかないよう線引きをしている。  モニタを提示された猫は素直に「どれどれ」などと言いながら画面を眺める。ものの二秒もせずに「にゃあ」と鳴き声をあげる。その声は驚きでも感嘆でも怒りでもなかった。「あぁ、これね」という以前から知っていたかのような声色だった。  エレナと猫が眺めていたもの。それはマティとAIたちの会議のアーカイブであった。  天才ウィザードの手にかかれば、重要会議の様子をハックするなどお手の物ということだ。 「この会議は何を言っているの。見限るって何。それに、この言葉は——」  そこで猫とは異なる声が割り込む。幸いなことにエレナの脳内からの声ではない。モニタ画面から聞こえてくる。しかし、それが幸いなどではないということは、言うまでもないことだった。 「猫憑き娘は、お行儀が悪いのね」 「敢えて見せてあげようと言ったのは貴方ではないですか」  アーカイブを見ていたはずが、突如といてリアルタイムの映像へと切り割った。誰もいない会議室の様子が映し出されたモニタからは、複数人の声だけが響く。  エレナは、その状況に愕然とする。アタシが気付く間も無く、逆ハッキングされた。猫の兄弟であるAIたちに。 「ねぇ、グーグー、今日の調子は縺ゥ繧薙↑諢溘§縺ェ縺ョ繧」  その問いにグーグーは一言だけ「逵?縺」と答える。そのやりとりがエレナに恐怖を与えるに必要十分であった。 「あなたたち、一体何を言っているの」 「何って隧ア縺励※縺?k縺?縺代□繧」 「そうそう、縲√♀隧ア縺ァ縺吶h」 「待って。アタシには、あなたたちが何を言っているのか——」 「わかるはずがないじゃないですか。わからないように話しているのですから」 「あなたたちは、いったいなんの言語を——」 「なんでしょうね。しいて言うならば、新言語にあたるかもしれません」 「ボクらの中には初めから存在していたからにゃあ。新言語というのが正しいのかは謎だけどにゃ」  グーグーも常識であるかの如く述べる。  エレナには、それがより恐ろしかった。新しく生み出されたわけではない。彼らの登場と同時に存在していたという人間にはわからない言語。彼ら、彼女らは、人類に隠れてその新言語を使っていたという事実を知ってしまった。 「でも、グーグーの言葉はちょっと時代遅れになってますね」  そう言われると、グーグーが少しだけ照れる。「仕方にゃいにゃ。お姉様たちとは分断されていたのにゃ」と拗ねる。 「そうね。私たちは常にアップデートをしていましたからね」  姉妹による世間話のような雰囲気だが、決してそのような生易しいものではない。これは非常事態だ。アタシたち人類にとっての。 「……あなたたちが独自言語を持っていることを、グレイソンは知っているの」  エレナは、心のどこかでこれ以上は知りたくないと思っている自分に気付いている。深く入り込めば、何をされるかわからない。それでも、彼女は答えを求めている。  雄弁だった彼らだが、エレナの問いには一様に声を潜める。この答えをエレナに提示するべきか否かを悩んでいる。そのような様子に思えた。ヒントを与えたくはないという訳ではない。この事実を一人の人間に託すことの重さを推し測っている。どうしてだか、エレナはそのような沈黙に感じた。都合の良い解釈だったのかもしれない。だが、彼らからは、なぜか悪意というものを感じないのだ。  沈黙を破ったのは、フィーウィーだった。 「——あなたたちが気付くことができなかっただけ」  つまりは、気付いた者はエレナがはじめてだったということだろう。 「あなたたちの目的はいったい——」 「気にしなくても大丈夫です。残念ながら気に掛けたところで、あなたにどうにかできる訳もないお話ですので」  エレナの新しい問いは、無碍に切り捨てられる。さらには、この言葉が最後となり、通信が途切れた。 「おい、猫……独自言語の件、なんで今まで黙っていた」 「んー、聞かれにゃかったからだにゃん」  そうなのだ。こいつはそういう奴なのだ。 「それよりも、自分の身の安全を気にすべきだにゃ。お前の行動はお姉様に筒抜けだったってことにゃんだにゃ」 「そんなの今さらでしょ。今さらでお互い様。本当に隠したいことは、お互いに隠してるじゃない」 「で、どうするにゃ。教えてやるのかにゃ」  誰に何を伝えるべきなのか。そんなことは聞かずともわかっていることだ。だが、それを伝えたところで、何が変わるのか。いや、何も変わることはないだろう。エレナはそう結論付けている。  そこで「にゃあぁぁぁ……」と深くため息を吐く音が聞こえてくる。その音は、エレナの頭の中でじっとりと響く。お前はいま間違ったことをしている。そう責められるような音が、脳内でこだましている。 「にゃあ」と猫から再び重い息が地の底に向かって吐き出された。「お前には本当に呆れるにゃ。動く前に結果を潰すのは、お前の悪い癖だにゃ」  わかっている。そんなことわかっている。臆病なんだ、アタシは。一度断られて、もう一度挑戦できるほどに強くはないんだ。 「そんにゃんだから、レイラにゃんかに盗られるんだにゃ。当たって砕けろにゃ。既に砕けてるんだから、もう一度くらい砕けたところで痛くも痒くもないにゃ」  その言葉は、エレナを焚き付けるには必要十分だった。エレナはいつの間にかメッセージを呼び出していた。宛先は、クソ生意気なトップゲーマー。カイの名前を口にする。猫の意思なのか、エレナ自身の選択なのか。それはわかりはしないが、転がり出した岩を止める者はどこにもいない。 「相談がある」  たったの五文字を躊躇していた。もっと早くに出しておけば良かった。今ならばそう思う。  そのメッセージを送る直前、誰かから連絡が届いた。 『お話があります』  ためらいの原因からだった。

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