S <また、恋をする>
第15話「棄てませんけど⁉」

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「お~、ずいぶん高く飛んだね」  日が傾き、茜色に染まる空をペガサスが舞っている。  その光景を地上から見て楽し気に回る心魅このみさん。  今、ペガサスは真空まそらくんと深空みそらさんを乗せて空高くを飛んでいる。  カードに戻る前にとペガサスが――『ハートのクイーン』ユディトが申し出たことだ。  ハートは愛を司る。  ひょっとしたら『ハートのクイーン』はあの二人に親子のそれに似た感情を灯していたのかもしれない。 『ありがとう』  しばし時は流れ、日が完全に稜線に消えた頃『ハートのクイーン』は地上へと降り立った。  そうしてお礼を言うのだ。この時間をくれた心魅さんに。暖かな気持ちをくれた兄妹に。 『では、また一年後にお逢いしよう』 『うん』  最後に深空さんは『ハートのクイーン』の頬にキスを一つ。 『ああ、そうだ。心覇このは』 「うん?」 『貴方の持つ懐中時計、それに宿る魂はなかなかの美少女と聞いているゆえ、惹かれてあるじを棄てぬよう』 「棄てませんけど⁉」  て言うか、そうか、やはり懐中時計にも魂がある、のか。  胸ポケットに入っているそれに手をそえて目を向ける。  金に輝く懐中時計。もっと話ができれば良いのにな。照れているんだろうか? 『ふふ。  では改めて、さようなら深空、真空。  これからよろしく、主・心魅、心覇』  ペガサスの姿が光に変わる。光はさながら小規模な銀河のように渦を巻き、黒いトランプへと落ちつき、心魅さんの手に納まった。  同時に光の消える遊園地。きていたそれが元の廃遊園地へと変貌し、 「今日はここで――だな」 『うん』 深空さんの姿をかしてゆく。 「また来年」 『また来年ね、お兄ちゃん。  心魅さんに心覇さんも』 「うん。またね」 「ん。元気で」  と言うのも変か?  深空さんの姿が消えてゆく。最後まで真空くんの手を握っていて、少し淋しそうに。  やがて、彼女の姿は完全に消えてしまった。 「……じゃ、僕も行くよ」 「オレたちも」 「うん」  また一年後に、ここで。

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