S <また、恋をする>
第20話「本当に放課後デートだねぇ」

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 簡単な情報、しかし重要な情報にオレと心魅このみさんは継ぐ言葉を失ってしまい。  家族……母と子。  ……いつの時代の? 「その人たちは今どうしているんだい?」 『さあ? 私たちは工芸家のお気に入りである人の為の唯一無二の逸品。  その方が亡くなればその方が認めた人に受け継がれていくの。  心覇このはのおじいさんがそうであったように。  心覇自身がそうであるように。  だから親が――工芸家がどうなったのかはわからないの』 「月華げっかもそうなの?」 『左様。  工芸家は旅人ゆえに決まった住処も持たぬ。  今どこにいるのか? そもそも存命であるのか?  我らにその情報はないのである』 「そ……か」  残念そうに、眉を落とす心魅さん。  情報がないとなると工芸家を見つけるのはムリ――だろうか? 「わたし、一度お逢いしてお礼を言いたかったのだけど」 「お礼?」  そう言えば工芸家を探す理由がめっちゃあると言っていたか。 「おばあちゃん、心臓が悪かったんだけど、この子たちの力のおかげで天寿を全うできたから。  あ、月華にはもうお礼済みね」 『うむ』 「そうなんだ」  オレの方には探し出す理由はなかったのだが、ここ数日で状況は変わった。  一度逢ってみたいと言う気持ちの芽も出てきていたのだが……探しようがない、か? 日本は小さな国だが存命かどうかもわからない人を探すには広すぎる。日本にいないかもだし。 『まあ、縁があれば本人か御家族には逢えると思うわ。  それまでのガマンね。  それより二人とも、良いの?』 「なにが?」 『先程チャイムと言うモノが鳴ったのだけれど』 「……」 「……」 「「やっべ!」」  怒られた。と言うよりも半分からかわれた。 「デートは放課後になぁ」  とは担任教師の弁。 「はぁいそうしまぁす」  とは心魅さんの弁。  その横でオレは苦笑していたり。心魅さんって度胸があると言うかキモがすわっていると言うか、余裕あるなぁ。 「一夜いちやのお家?」 「そう」  お昼休み。  がっしん! と机をつけてくる心魅さんと一緒にお弁当をいただきながら一夜が『自宅』をご所望であることを話した。オレだけで行くこともできるけれどこう言うのはちゃんと話しておいた方が良いだろうと思ったから。  ……いや、正直に言おう。  心魅さんなら一緒にくると言うだろう。  オレはそれを――期待しているのだ。 「わたしも行く」  この返事を期待していたのだ。  だから実際に心魅さんの口からこの言葉が出た時、オレは無性に心が弾んだ。  ……参ったな。  ここに至るまでオレは恋をした経験がない。きっとオレの心は堅いのだ。と思っていたのにこうも簡単に……。 「本当に放課後デートだねぇ」  そう言って楽しそうにサンドイッチを口にする心魅さん。  少なくともオレは心魅さんに嫌われてはいない。と思う。  ……心魅さんも同じ気持ちだと、良いな。

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