S <また、恋をする>
第38話「お誕生日おめでとう心覇くん!」

作品に栞をはさむには、
ログイン または 会員登録 をする必要があります。

◇ 「お誕生日おめでとう心覇このはくん!」  パァン! とクラッカーが鳴らされる。  白く丸いケーキには赤・ピンク・黄と様々な色のロウソクが立っていて、明かりが灯っている。  オレはそれを一息で消して。  おじいちゃんの忘れ形見の一つ、オレたちの新居にてささやかな拍手が音を出す。心魅このみさんと、一夜いちや真名まなから。全トランプを解放するとぎゅうぎゅう詰めになってしまうので『スペードのエース』である真名が代表で表に出ている。 「よっし、切り分けるよ」  意気揚々とすごく楽し気にナイフを握るのは心魅さん。無事、今日中に祝えたことが嬉しいらしい。祝われる対象であるオレよりもだ。その気持ちがとても嬉しい。  今日“真名を探して隣県を訪れていた”オレたちは障害なく彼と出逢い、こうしてともにいる道を選んでくれた彼と誕生日を祝えている。  なのにどうして。  一夜は浮かない表情をしているのだろう。 「一夜、なにがそんなに気になるんだい?」 『……今は良いわ。誕生日を祝いましょう。あとで話すから』  そう話す一夜の前にも小さく切られたケーキが渡った。  オレたちの前にもロウソクの外されたケーキが並んで、 「さ、食べよ」 心魅さんの合図でいただきますと手を合わせ、早速ケーキにフォークを刺し入れた。予想以上に柔らかなクリームとスポンジ。簡単にフォークによって一口分掬い取られて、そのまま口内に招き入れる。 「……うまい」  キレイな飾った言葉なんて出てこない。  自分たちで作ったケーキだから気持ち採点が甘くなっているかもだが、本当においしいモノを食べるとこうなるのか。 「うん、美味しいね」  心魅さんも嬉しそう・楽しそうだ。  あ、真名はものすごい冷静。静かにケーキを口に運んでいる。 『いいえ。  この表情は喜んでいるわ』  つんつんと真名の頬を指でつつきながら、一夜。 『こら、止めぬか』  そう言う表情もまた冷静。  オレから見たら真名の表情に変化があるようには見えないのだが、一夜にはわかるのか。同族のカンと言うやつだろうか。 「わかる、心魅さん?」  ひそっと耳打ち。 「ん~、わたしの場合どうも心の温もりが伝わってくるっぽいね。  ちゃんと喜んでいるよ」 「そうなんだ」 「うん」  確かに、オレにも一夜の気持ちが『なんとなく』把握できる。これを心魅さんは心の温度と表現する。  今一夜から感じる心の温度は、七割が祝ってくれていて、三割に陰りがある。やはりなにかを気にしているのだ。  このパーティーが終わったらちゃんと話を聞かねば。あるじとして、友だちとして、家族として。

応援コメント
0 / 500

コメントはまだありません