間違いようのない、バースデイ。 今年にしたのはナゼだろう? 『自分の死期と、心覇に私を継がせるのが今年だからよ』 「へぇ。本当に愛されて――ん? 四月十日? 明後日じゃん!」 「え、ああ、うん」 「言ってよ! お祝いするから!」 「いやぁ、新学期でなにかと忙しいだろうと思って」 心のドキワクもまだ納まっていない時期だろうし。事実オレたちまだ部活をどうするかも決めてない。 「だからってスルーしたら後悔するとこだったよ」 ……後悔、してくれるのか。 「するよ」 そいつは、なんと言うか……とても嬉しい。 「あ、わたしは十二月一日ね」 「うん。覚えとく」 ちゃんと祝おう。忘れることのないように心とカレンダーに刻んでおこう。 オレが嬉しいと言うことは他の人もそうだろうから。 「右に十、と」 回し終えた。すると鍵穴が浮き上がって横にスライドして、懐中時計をはめる台が出てきた。 良くできているなぁ。 オレは懐中時計を手にし、台へとはめる。 カチン、と鍵の外れる音がした。 『ここは開き戸ではなくて引き分け戸よ』 「うん」 扉を左右に開く。 未知なる部屋に、いざ突入。 「……いや、ムリ」 突入しようと思ったのだけれど、部屋の中を見てオレの脚はピタリと止まった。 止めざるを得まい。中がこれでは……。 「わぁお……」 ほら、心魅さんも呆然としている。 『どうかしたかしら?』 正気なのは一夜だけだ。 「一夜……キミ、こんな大豪邸に住んでいたの?」 そう。一夜のお家。それを見て固まったのだ。 だって、三階全てを埋めるほどの木造りの大豪邸だったのだから。 基本は和の館。全て木でできているようで――色を塗られてはいるが瓦もだ――、上は二階まで。 しかし横にとにかく広い。広すぎる。 館の中心には庭まであるし――ここは土と苔と水が使用されている――。 あ、奥の角だけ洋の尖塔が見える。洋間だろうか。 『豪邸かしら?』 自覚なかった。 「これを移動させるのは……そもそも置くスペースがうちにはないよ」 『え~?』 唇を尖らせる一夜。せっかくの端正な顔立ちが台なしだが可愛いなこんにゃろ。 「どうするかな……」 『良いこと心覇? このお家を持っていけないと言うことはまた混浴と同衾よ?』 「ああ、うん……」 それは困るな。心がすり減る。 「混浴と同衾が、なんだって?」 「う」 これまでに聞いた覚えがないレベルのドスがきいた女の子の声。無論、心魅さんからである。 しまった……混浴と同衾についてはあえて話さなかったのに……! 「教えてくれる? 心覇くん?」 うあ……笑顔なのに超怖い……。 「えっと……」
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