S <また、恋をする>
第14話『死ぬまでずうと約束を覚え、誓いを覚えていられるのかな?』

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「わかるの?」 「うん」  オバケ――妹さんの方に振り向く心魅このみさん。  少しばかり腰を折って妹さんの目線と同じ高さに自分の目線を持っていく。 「ねえ、この中で黒いトランプを見なかったかな? これの一枚なんだけど」  言って、トランプの束を妹さんに見せる。  しかし妹さんは男の子の背に隠れてしまう。 「……こいつを消したりは、しないんだな?」 「うん。約束する」 「……深空みそら」  信じてくれたようで、妹さんの名を呼び少し体をずらす男の子。  深空さんは恥ずかしそうに俯いて。 「深空は僕としか話した経験ないんだ。それもできるようになったのはここ最近」 「そっか。  わたしは咲崎さきざき 心魅このみ。こちらのお兄さんは八千やち 心覇このはくんだよ」 『……其坂……其坂そのさか 深空みそら……です』  小さく、か細い声。 「ありがとね、教えてくれて」 「キミは?」 「真空。其坂そのさか 真空まそら」  真空くんに、深空さん。  うん、覚えた。 「トランプカード、見てないかな、深空さん?」 『……見てない』 「そっかぁ」 『あ、でもあたしが毎年目を覚ます場所は決まっているから、そこが一番なんかの力は強いのかも?』  少し眉根を下げた心魅さんに、首を傾げながら、深空さん。兄である真空くんのシャツの裾を握りながら。 「じゃね、そこに案内してくれる?」 『うん』  ここ、か。  この場所に至るまで、オレたちは互いの事情を話していない。真空くんと深空さんが積極的に聞いてくることもなく、オレたちが話を切り出すこともなかった。  壁があるから、出会ったばかりだから、と言うのもあるだろうがそれ以上に、秘密を共有する相手が増えないように。  四人の気持ちは一致して、ゆえに話していない。  それでも良いと思った。  そんな関係があっても良いと思った。 「キレイなペガサス」  そこに――遊園地の中心にあったのはこの遊園地のシンボルとも言うべき白いペガサスの像。翼を広げたその姿は、どこか神々しくも見える。  しかしだ。心魅さんの言うようにとてもキレイ。汚れも傷も全くないのだ。不自然なほどに。蘇った遊具たちはいつの日かの傷も再現されているのだがこのペガサスはキレイなままで存在している。  なるほど。特別ななにかの力が作用している風に見える。 「どう、心魅さん?」 「うん、いるよ」  ペガサスに触れる、心魅さん。  するとどうだろう? ペガサスが羽ばたいたではないか。 『一つ、お聞きしたい』 「「「――!」」」  喋った。ペガサスが口を利いた。女性の声だがあまりにも澄んでいて現実味がない声だ。 『我らはあるじを幸福にする為に存在している。貴女の幸福を願っている。  しかしそれはこちらの少女・深空と少年・真空の幸福・不幸と引き換えではない。  我をカードに戻せばこの場にかけている力は消え、その力を受けてここに、今日と言う日にここに降霊する深空は二度と現れなくなる。  それで良いか?』 「『……!』」  深空さんが真空くんに抱きついた。離れない、と主張するように。 「ん~、それってわたしが毎年ここに貴女を連れてくれば良いんだよね?」 『死ぬまでずうと約束を覚え、誓いを覚えていられるのかな?』 「大丈夫」 「オレも覚えておくよ。覚えて、心魅さんと来年もその先もここにくるよ」  ペガサスの視線がオレに向いた。オレの顔をジッと見つめて、繋がるオレと心魅さんの手を見た。 『了解した。  今日と言う日の約束を死が訪れるまで――』 「死んでも、だよ」  言いながら、握ったオレの手を自分の胸へと持っていく心魅さん。  この心に誓いを立てる、そんな風に。  だからオレも一つ頷いて。 『では、今日と言う日の約束を永遠に。  深空、真空。それで良いか?』  視線を交わし合う、兄妹。  その視線をオレと心魅さんに向ける。 「良いのか? 自分の人生を犠牲にして――」 「犠牲じゃないさ」 「うんうん。犠牲じゃない」 「……そうか、ありがとう。  深空」 『うん。ありがとう』  みんな左手の小指を立てて左右に振る。 『委細全て了解した。  ただ、主にはカードに戻るのを少々待って頂きたく』 「うん?」

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