S <また、恋をする>
第31話「――ハッ。イケないトリップしてた」

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 オレは香水を壊さないように丁寧にテーブルに置き、バッグを漁る。そこからとあるモノを取り出して膝の上へ。 「ん?」 「アルバムだよ」 「アルバム」 「そう。  これからいろいろ撮って、貼っていこうかなって。  カメラと小型プリンターもあります」  バッグから取り出す、デジタルカメラと専用のプリンター。 「思い出を激撮かぁ。良いね」 「さっそく一枚」  カメラを持つ腕を伸ばして、自然と二人は頭を寄せ合って一枚撮影。  プリンターとコードレスで繋いで、印刷する。 「いっぱい撮っていこうね、心覇このはくん」 「うん」  アルバムに貼られた最初の写真を眺めながら、二人はまるで恋人のように寄り添う。  このアルバムが写真で埋まるのはそう遠くない気がする。そうなったならまた新しいアルバムを買おう。何冊も何冊も増やして、想い出を積み重ねよう。  そしていつの日にか結婚式で流して――待て。流石に気が早い。最早妄想と言って良い域に突入するところだった。危ない危ない。 「――ハッ。イケないトリップしてた」  心魅このみさんもかい。 「心覇くん」 「うん?」 「これからバースデイケーキを作ります」 「え?」 「大丈夫。材料はお母さまに頼んでもう用意してあります」  いつの間に。こないだが初対面のはずなのに。 「ま、まあ良いや。オレもやるよ」  一瞬「手伝うよ」と言いそうになった。けれどそれは「自分はメインにならないってことだからダメ」ってテレビで観たのを思い出してなんとかつまらずに言葉を続けられた。  言葉の選択、大切。 「うん。一緒に作ろ」 「ん」 『そろそろ良いかしら?』  二人立ち上がろうと腰を浮かした時、一夜いちやの声が。 『初々しいお二人さん。ちょっとお願いがあるのだけれど』 「な、なに?」  懐中時計を取り出して、手の上に乗せる。 『月華げっかと少し話したいのだけれど』 「月華と?」  サッとトランプを取り出す心魅さん。 『そう。  どうも、私たちに似た「波」を感じるのね』  波。気配みたいなもんだろうか。 『そうね、そんな感じ。  恐らく「スペードのエース」の波だと思うの』 「「――!」」 『スペードのエース』――行方不明になっている月華最後の一枚。 『それについて話をまとめるから、私と月華を私のお家に』

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