S <また、恋をする>
第27話「『良くやった』」

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『あら、月華げっかには力があるのに私にはないと思って?  まだ、教えてはあげないけれど。私の力は反則だから、頼ってはダメよ』  懐中時計由来の力、か。  想像はできるが……本当に? 『まあいざと言う時に使用するのは躊躇わないから、安心して同棲なさい』 「うん」 「……マジか」  一日が過ぎて、金曜日。  昨日オレと心魅このみさんの同居が突然決まって、一先ずあの場は解散となった。互い荷物をまとめる時間が必要だったからだ。オレが住むのは良いんだ。親も納得してくれたし。  問題は心魅さん。説得すると言っていたがオレは楽観視していなかった。オレが親だったなら高校生から男と暮らすなんてとてもではないが了承できかねる。だから心魅さんのお父さまもそうだろうと思っていた。  なのに。 「嘘ではなく?」  オレと心魅さんはいつも通りに机をひっつけてお弁当を咀嚼していた。咀嚼しながら心魅さんの報告を聞いた。 「嘘じゃないよ」 「まさかOKが出るとは……」  そう。心魅さんの御両親はOKを、了承を出されたのだ。  ナゼに? 「ちゃんと相手は男だって言ったんだよね?」  女子と暮らす、とは言わずに? 「もちろんだよ。  ちゃんと『心覇このはくんと暮らします』って言ったよ」  名前も出しましたか。  諸々の状況を呑み込む為に一口麦茶を啜る。喉を通って胃を冷やす、冷たい麦茶。ああそうそう、オレは季節問わず飲むお茶と言えば冷たい麦茶だ。例え雪の日でも。麦茶が好きと言うのもあるが猫舌なもので熱いお茶が苦手なのだ。同じ理屈で牛乳も温めない。  あ、そうだ。一緒に暮らすならオレの食の好みを心魅さんに知ってもらう必要があるな。当然オレが心魅さんの好みを知る必要もある。 「でもなんでだろう? 両親――主にお父さんがしぶっていたのに心覇くんの名前を出したらOKくれたんだよね」 「オレの名前……ひょっとしてどこかで会ったことあるのかな?」 「知りあいって言うのが納得できる理由だよね。  覚えあるかな? お父さんって短髪で半分以上白髪、背は百六十九、基本灰色のスーツで胸には鷹の画が描かれたループタイ、声は男の人にしては珍しく高い方なんだけれど」  説明され、脳内でお父さまの姿を構築する。  うん、知らない人だ。 「職業は?」 「宝石商」 「宝石」  残念ながら宝石商に知人はいない。やはり知り合いではない。 「オレの知人じゃないとなると……親が友だち、とか?」 「心覇くんはわたしのことどう御両親に報告したの?」 「名前を出してもわからないだろうと思ったからクラスメイトの女子とだけ」  おじいちゃんの家を使用する、まずそれに驚かれ、喜ばれ、少し寂しくなるなぁと言われ、最後に女子と~と報告した。 「なんて言われた?」 「『良くやった』」 「あはははははははははは」  大声で笑う心魅さん。それに驚き振り返るクラスメイトたち。  いや、まさに失笑である。オレもその場では妙な笑いがこみ上げてきたから心魅さんが笑うのもわかる。  別に「恋人ゲットしたよ」、とは言わなかったのだが。……一緒に暮らしている時点でそう思われるのは仕方ないか? 「あ、待って。オレとの関係は御両親になんて言ったの?」 「え? あ~……」  ソッと目をそらされた。間違いなく嘘をついた人のリアクションだ。 「……恋人」 「やっぱりかい」 「求婚された恋人と」 「……そこまで言っちゃったの?」  一線も二線も三線も超えちゃったなぁオレたち。

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