時速1700㌔の秒針
空いているなら4

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 俺は小さくなる以外できない。男の俺からしたってカッコいい、なるほど格が違う。 「ね、ナンパしておいて私は放っておくつもり?」  隣のテーブルから彼女が声を掛けてくる。今までおっかない男が横にいたからまじまじと見れなかったけれど、見れば随分色っぽい、大きく開いた胸の谷間に呑み込まれてしまう。大学生だろうか? 大人の女性に見えた。 「すみませんでした。俺には狙っている女性ひとの『彼氏の席』があるんで」 「あなたが座れない席なんてあるのかしら?」 「それが中々座れないんですよ」  女性はチラッと美鈴を見た気がした。そして俺のことも。 「残念ね、その女性ひと、見る目がないのね?」  女性は俺をバカにした……いや完全に勘違いだが美鈴が恭平を選ばない理由に『俺を』原因と捉えたような気がした、そして俺は彼女の選抜から見事に落選したわけだ。 「そんなことないですよ、彼女はキチンと中身を見てる、俺がまだ及ばないとこがあるんですよ」 「もったいない、私の隣の席ならいつでもOKよ。どうもありがと。楽しかったわ」  もう一度彼女は俺を見た。そして少し微笑んで店を後にした。 「ホントもったいない……」  俺はわざと聞こえるように呟いた。よだれを手の甲で拭いたのはどら焼き芋のせいだ。俺の言葉に誰もリアクションしなかったのは幸いだった。言えば言うほど惨めだった。

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