時速1700㌔の秒針
勇気と優しさ2

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 外の光が強くなるたびに美鈴の顔が途切れる。アナウンスが次の停車駅を告げたとき、一瞬美鈴の口角が上がったようにも見えた後、その口が俺の耳元で囁いた。 「優しくて勇気があるところ、かな」 「ど、どこがっ? 俺に勇気があるって?」  俺は美鈴の息がかかった耳の方に驚いて慌てる。それにそれは恭平と同じじゃないか、同じなら敵うはずもない……。  それでもがっかりしないのは、まだ心臓がドキドキしているから。耳にその温もりが残っているから。耳の奥から美鈴の音が離れないから。脳内で妖艶に俺の耳元で囁く美鈴が何度も再生されているから。……デフォルメが波紋のように広がって行き、段々波は大きく、高くなる。想像の中の美鈴はカフェであった女性のようにセクシーさが増していき、俺の中には欲望が渦巻いた。 「あたし、見てたんだ、入学式のときのこと」  キュアな言葉が俺を元の状態に引き戻す。

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