さくらさんは悪魔と戦ってます
1-1 捕らわれの護人

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西東京の小さな西京村。 僕は役場の福祉課で働いている。 田中三郎、28才。 買ったばかりの軽自動車ハスラーで自然豊かな狭い国道を鬼屍きし神社へと向かっている。 現村長の奥方である佐藤夫人からお見合いのお話を頂いたからだ。 佐藤夫人は20年に渡ってこの村の女性たちのトップに君臨する実力者であり、村議会の決定すら覆すほどの権限すら持っている。 その佐藤夫人の紹介とならば断わることなどできず、僕の母親への激しいプレッシャーを仕掛けて、僕の意思など関係なくお見合いの日取りが決まった。 お相手は鬼屍きし神社の45代目当主である鬼屍きしさくらさん。 僕は面識がないのだが、村民課の女性管理職である堂島梓さん(42)に聞いたら、「あんな美人を人生で見たことがない」だそうだ。 堂島さんのあの表情を思い出すとアクセルを踏む力も若干強くなる。 僕はこれまでの人生で女性とお付き合いしたことがない。 まあ…童貞であることは認める。 決して女性に興味がないわけではなく、めちゃめちゃ興味がある。 しかしだからといってこのビビりな性格がいつも邪魔する。 嫌われたらどうしようと、いつも思ってしまい彼女もできずにこの歳まで来てしまった。 二人の兄にもバカにされる。 ちなみに演歌好きの親父のせいで、長男は一郎(鳥羽)、次男は二郎(冠)、そして僕は三郎(北島)と日本歌謡を代表するレジェンドにちなんでつけられた名前である。 現在は家業の酒蔵を継いだ一郎が我が家の家長となり、僕は居候の身である。 二郎は都心でIT関係の仕事に就き家族を持ち新宿に住んでいる。 一郎の嫁と母親の折り合いが悪く、なぜか僕が仲裁役になるのが一番のストレスである。 親父と一郎はまるで他人ごとのように僕に投げる。 僕は自信はないが、堂島さんが言っていた絶世の美女を見に行くという興味本位が先走る不純な動機で目的地に向かっていた。

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