さくらさんは悪魔と戦ってます
1-5 捕らわれの護人

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「まず私の方からお二人のご紹介をさせていただきます。」 佐藤夫人の言葉に緊張が走る。 すでに経歴等のプロフィールは事前に提出してある。 もちろんさくらさんのそれも拝見済みだ。 あえてここでそれを復唱するという佐藤夫人の行為。 戦国武将も戦の時は自分の身分を宣言し合って戦いが始まる。 見合いとはまさに戦なのだ。 いうなれば嫁取り合戦。 佐藤夫人の言葉はまさに合戦の始まりを告げるほら貝の轟きなのだ。 「まあ、形式なんで簡単に。 こちら田中三郎さん。 役場にお勤めの28才。 この方は福祉課の職員さんなんだけど、お若いのに気の利くお方で誰にでも本当に親切で村のお年寄りたちから慕われてらっしゃるのよ。 サブちゃんってかわいがられてねぇ。 あとご実家の田中酒造は長男さんがお継ぎになられてて、たしか海外の品評会で賞もお取りになられているのよね? この小さな村が誇る一番の名産品で、お土産で持っていくと本当に喜ばれるのよ。なんてったって宮内庁御用達ですものね。 あとの細かい学歴などは事前にお渡ししているプロフィールを見てね。」 佐藤夫人がまず僕の紹介を終える。 完璧だ…!! 特段なにも取り柄のなく、周囲の中間をとぼとぼ歩んできた僕の人生が、佐藤夫人の言葉に変換されると、何段階も上がる。 そしてさりげなく家業を長男が継いだことを伝えることで、僕が養子入籍可能という将来的なビジョンまでもしっかりと印象づけた。 そう、この縁談には大きな条件がある。 それは養子として鬼屍きし家に入るというものだ。 この神社の歴史は深く、平安時代にさかのぼる。平将門や源頼光も拝礼に訪れたとの文献もある。(諸説あり) さらに総理大臣が変わる度に、お忍びで参詣している。 そういう理由から45代目が女性ということもあり、家系を守るうえでさくらさんには養子との結婚が課せられていた。 「それでは次に…」 と佐藤夫人がさくらさんの紹介を始めようとしたとき、 「失礼します。お茶をお持ちしました。」 と女性が入ってきた。 なぜか忍者のコスプレをした小柄な女性。 手際よくお茶と菓子を三人の前に奇麗にセットした。 「くれない。ありがとう。」 とさくらさんが言うと軽く会釈をして素早く部屋を出て行った。

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