パピヨン
第二話

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 狭い駐車スペースにいるのは、いつもだいたい同じ顔ぶれで、何をするでもなく、ただそこに集まっているだけのような、そんな雰囲気だった。奇妙に明るいコンビニの灯りの下、彼らはいつも、餌を分け合う野良猫のようにひとつのものを食べている。誰かがいなくなったり、戻ったり。その人も、いる時といない時があった。時々、二度と見なくなる人もいて、それが、その人でなければ良いと、思っていた。  彼らに対する好奇心は、日毎に募っていく。それでもユカは、彼らを真っすぐに見てしまわないように、視線を逸らして彼らの前を横切っていた。  その日は二人しかいなかった。  いつものように、適当な雑誌を手に、ユカは硝子越しにその人を見つめる。声は、時々聞こえる。でも、あの人の声かどうかは、わからなかった。あの人は、大きな声では話さないようだから。今日も声は、聞けないのかもしれない。  諦めて帰ろうと雑誌を戻し、目的もなくコンビニの中を歩き回る。目に付いた菓子パンやジュースを灰色の買い物籠に入れて、レジに向かった。  すると、ドサッと何かが、ユカの持っている籠に入れられた。振り向くと、さっきまであの人の隣にいて、あの人と同じものを食べていた背の高い男が、にっと笑った。 「これも一緒に買ってくんない?」  入れられたのは、幕の内弁当とお茶。 「金無くってさ。俺ら最近、まともなもん食ってないんだ」  わざとらしくポケットを探るふりをするけれど、それが見せかけだけだとすぐわかる。 「一個で良いの?」  問いかけると、びっくりしたように目を丸くする。 「じゃ、じゃぁ、これ、この弁当、もう一個、良い?」  どもって焦る男は、一時前のふてぶてしさが消えて、妙に幼い表情になる。おどおどしているようにも見える男に、ユカはまるで弟にするみたいに笑いかけて、同じ幕の内弁当とお茶をもうひとつずつ、自分で籠に入れた。 「外で待ってて。持ってくから」 「うん!」  男は無邪気に頷いて、素直に外に行く。ちらりと硝子の向こうを見ると、あの人がユカを見ていた。  目が合う。視線がぶつかる。無表情な瞳が、同じ感覚で瞬いた。

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