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 翌朝、ふたりで連れだって事務所にやってきた玲奈は、悠人をアトリエに送り込むと、涼太郎を呼び止めた。 「どうしたものかしら」 「くっそ、あの女。じゃまばっかりしやがって」  温厚な涼太郎がめずらしく語気を強める。きのうのうちに、未希から報告を受けた涼太郎は、写真をみて顔をしかめたのだった。 「いま、いいバランスなんだよ。玲奈といっしょになる前は、悠人はいつもギリギリに張りつめていたからね。いつか弾けるんじゃないかって心配だったんだ。玲奈のおかげですこしゆるみが出てきていまが一番いいんだ」 「わたしはゆるみ?」 「いってみれば余白だな。悠人には必要なものだよ」 「そうなんだ」 「きみ、いろいろと刺激的だったからね、悠人も現実にもどってきたっていうか」 「刺激的って」 「ああ、からかっているわけじゃないよ」 「いえ、刺激的は認めます」  玲奈は当時を思い出して、ちょっと赤面する。 「だからいまさら出てこられてもじゃまなだけなんだよ。バランスをくずされたくない」  涼太郎は吐きだすようにいった。 「佳乃の目的がわからないのがこわいな」 「ここにきたってことは、悠人に会いに来たのよね」 「だろうな。偶然通りかかる場所ではないからね」 「悠人はなにも話していないっていってたけれど」 「とにかく、これ以上の接触は避けたいな」 「うん、悠人も会いたくないっていってたわ」  今朝の悠人は、表面上はいつもどおりだったが、心のうちはどうだかわからない。すこし気になる。  涼太郎は事務所にいるスタッフたちに声をかけた。 「悠人が外に出るときには、誰かついてくれ。ひとりで外出させるな。コンビニでもだ」 「え、なんでですか」 「接触を図ってくるやつがいるかもしれない。それを避けたい」 「ストーカーですか?」 「そうじゃないといいんだけどな」 「どんなやつです?」 「日に焼けた女だ」 「ざっくりしすぎ」 「見ればわかる」 「訳アリっすか」  そういったスタッフは玲奈にぎろりとにらまれて、すくみあがった。

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