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 時刻は午前8時を過ぎたところ。  これから孤児院に行くから、神父様は始業前のお祈りをしてる。  ……こんなにしょっちゅうお祈りせなあかんの? すごい大変そうやの。  お祈りが終わった神父様の後ろをぽてぽてついていく。教会の裏に車庫があるみたい。車で行くんかなって思ったら、めっちゃゴツいバイクが出てきた。 「あのー、神父様、これで行くん?」 「車検に出しているから車が無いんです。……ツノが邪魔でメットを被れませんね」 「痛い痛い! 折れるやのー!」  ウチにヘルメットを被らせようとする優しさは持ち合わせてるけど、ツノを折ろうともしてるから、やっぱり優しくないんか天然なのか何なんやろ。ゴンゴンぶつけられて痛かったやの。 「幻術でツノと尻尾と翼を見えなくできるなら、姿を消すこともできますよね? それで後ろに乗ってください」  ウチは言われた通りに後ろに乗る。なんとなく嫌な予感がしてきた。  もしかして、この神父様、走り屋やない?  そう思った瞬間に暴走族ヨロシクなくらいに、ドルゥンドルゥン鳴らして、ブォオオンって走り出した。すぐに信号待ちで止まる。 「神父様! ウチ、落ちるやの!」 「私に掴まっててください。落ちたら後続車に轢かれますよ」  お言葉に甘えて腰に腕を回す。あ、今なら隙が多いから――……やめとこ。怖いやの。  ギュッとするだけでも、ちょっぴりエネルギー補給できるから良いやの。ギュッとしたら、ますます神父様が欲しくなってきたやの。どうにかしてこの人をウチにメロメロにして、せーえきを搾り取ってやりたいやの。そのまま一生ウチのしもべにしても良いやの。この町の聖職者を堕落させたら最高に良い感じになるはず……。町中の男を我が物に。ふふふ、良い響きやの! 「着きましたから離してください。今って貴女の姿は見えてるんですか?」 「見えるはずやの。ほら」  ウチは遠くにいる子供に手を振る。振り返してくれたから、しっかり見えてるし「シスターがいる!」って言ってるから見えてるやの。  確認が終わったから神父様はゆっくり歩き始める。ウチはその後ろをぽてぽてついていく。孤児院の責任者に紹介されたから、頭をさげておく。  施設内の視察をするって言うから後ろをぽてぽてついていく。向こうから男の人が手を振りながら駆けてきた。 「廊下は歩くものですよ」 「あはは、わりぃな。姿が見えたからつい」 「……ちょうど良かった。この子の案内を頼みます。私は懺悔を聞かないといけないので」 「へっ? ああ、わかったよ」  神父様は横の部屋に入っていった。  男と二人きり。これはチャンスやの。この人をウチにメロメロに……。 「えいっ!」 「ん? おれに魅了チャームしてどうすんだ? って、サキュバスなら当然のことか」 「うちの人を魅了するなんて、許さないよっ!」 「ぎゃんっ!」  急に現れたピクシーにどつかれたやの。  頭に四葉のクローバーを乗っけてる。ほんまにあれ乗っけな見えへんねや……。  ピクシーを連れてるって、この男、何者やの? 「ウチがサキュバスってわかるやの?」 「おう。おれはエクソシストの夏樹なつき。こっちは相棒のおはるさんだ」 「うちの人に手を出したら許さないよ! サキュバスなんてメッタメタのギッタギタにしてやるさ!」  ピクシーって、ダメ人間の世話するの好きやから、この男もなんか抜けてるんかな……。 「それにしても、小焼こやけは何でサキュバス連れてんだか。まあ、あいつの好みにピッタリの姿してっけど」 「あのー、小焼って、神父様の名前やの?」 「あ。やっべ!」 「あんたねぇ! 何サキュバスに名前教えてんだい!」  うん。抜けてたやの。  謀らずとも神父様の名前ゲットやの!

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