花壇のお手入れがひと段落したところで、ダメンズエクソシストが遊びに来たやの。 遊びにって言うよりは、お仕事なんかもしれへんけど、ウチには遊びに来たように見えるやの。目に見えてへんけど、肩にはピクシーのおはるさんが乗ってるんやと思う。夏樹様のほっぺが異様に引っ張られてるやの。 ウチは植木鉢に新しく球根を植えるように言われたから、作業を続けるやの。手で土を掘り起こして、用意されてた球根を植木鉢にぶち込んで、軽く土をかけてあげるの。これを十個繰り返したやの。ボランティア活動の一環らしいやの。神父様って色んなことやるんやの……、大変やの……。 花壇の端に見慣れない葉っぱがはえてた。雑草なら抜いてあげなあかんけど、これは雑草? とりあえず、引っこ抜いてみるやの。 「えいっ!」 「ぴやあああああああ!」 「な、な、何やの!?」 引っこ抜いたら、人の形をした根っこが叫んだから、ウチは慌てて埋めなおした。マンドラゴラがはえてる教会ってどうやの!? ウチ、叫び声聞いてしもたやの。人間やったら死んでたと思うの。悪魔で良かった……。 「あんた、マンドラゴラを抜いちゃ駄目じゃないかい!」 「知らんかったんやもん」 頭にみずみずしい四つ葉のクローバーを乗っけたおはるさんがウチの隣に来た。透明の翅が光って、輝いて見えるやの。ピクシーの翅は虫のように透明で綺麗やから、ウチはちょっと羨ましい。ウチのはコウモリに似てるから、透明な翅が羨ましいやの。天使の翼も一枚一枚が抜け落ちるのが儚くてオシャレやと思うの。仲良くはできへんけど。 「あんなにすごい火の魔法を使えるのに、マンドラゴラがわからないとはねぇ」 「あれは神父様がオーバーキルしたやの。ウチはちょっと燃やした程度やの」 「あっはっはっは、そりゃわかってるよ。あの人はオーバーキルしがちなのさ。用心深いと言うか、信じてないと言うか、もしかしたら神さえも信じてないかもしれないよ。司祭だってのにねぇ」 「おはるさんは、あの人について詳しいやの?」 「いンや。うちの人より仕事ができるってことしか知らないよ」 遠回しにダメンズって言われてる夏樹様可哀想やの。まっ、ピクシーに好かれてる時点で、ダメンズ認定されてるから、無問題やの! 「知ってることと言えば、ここの花壇の呪物は、魔女が喜んで取引に応じてくれるものらしいさ」 「神父様が魔女と仲良しなのも驚きやの」 「ああ、伯母さんだからねえ」 「伯母さん?」 「伯母さんさ。父のお姉さんだって聞いたよ」 つまり、神父様のお父さんは……体に魔術回路を持ってるから、強い魔力を有してるってことになって……、そりゃ半分悪魔みたいなもんやのっ! だから、高速充電されるわけやの。ウチのバッテリーもすぐフルチャージされるってわけやの。ウチは電力で動いてへんけど。 それなら、ますます神父様をメロメロにしたいやの。 「おはるさん。どうやったら、あの神父様をメロメロにできると思う?」 「あたいにゃそのメロメロって感覚がわかんないけど、もうなってんじゃないかい?」 「でもウチ、まだせーえき貰ってへん。事におよんでへん」 「そうは言うけど、あの神父様、今までならサキュバスなんてすぐにロケットランチャーぶっ放して木っ端微塵にしてたくらいさね?」 「……怖いやの」 急にいなくなったサキュバスは皆ロケットランチャーで木っ端微塵にされたって考えたら、怖いやの。怖すぎて、ぶるぶる震えてしまうやの。 「その肉片でこの花壇が栄養満点の土だって噂」 「ひゃうっ!?」 「冗談さ。ここの土はうちの人が薬物調合してる安全な土さね」 「驚かせんといてやの……」 あの神父様なら、返り血を浴びても舌なめずりしてそうやし、獲物をバラバラにして土に混ぜそうやから、怖いやの。信じてまうやの。ぶるぶる。
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