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 神父様はめっちゃ真面目な表情してるから、ウチをからかってるわけではないと思う。でもこの契約って、雇用契約ってことやから……。 「ウチと契約してやの」 「では、この書面に押印を……。判子持ってますか?」 「判子持ってないやの」 「じゃあもうナイフで指切ってください」 「違うやのー! そうやなくて! そういう契約やなくて!」  ウチは手をバタバタさせて訴えるも、神父様には全く通じてないようやった。ううん。通じていないふりをしてるんかも?   なんとなくわかってたけど、鈍感とかそういうあれやなくて、他人に興味が無さ過ぎるんやと思う。それでも自己中ってわけやないからよくわからへん。……聖職者をやるくらいやから、奉仕する精神はあるはずやし。 「では、どういう契約ですか?」 「神父様は、信徒を増やして、教会に人を来させたいん?」 「まあ、いないよりかはいたほうが良いですね」 「それなら、ウチが人間を魅了して、ここに人をいっぱい呼んであげるやの!」 「……その手があったか」  神父様はポンッと手を打った。  納得するところなんそれ? 言い出しっぺのウチが言うたらあかんけど、完全に悪魔の誘いやの。実はけっこう強欲なところがあるんかな。そしたらこれで簡単に我が物にできるはず! 「どう? 人をいっぱい呼んであげるやの。そんで、全員信徒にすればええの」 「いえ。それだと信仰心がゼロですし、貴女についてくるなら、私はいなくても良いと思います」 「そこは、こう、魔法でどうにでもなるやの! 人の心なんて、ウチの魔法で一発やの!」 「それなら、私も貴女の魔法で一発だと思うんですが」  痛いところつかれたやの!  あの手この手の魔法をぶっかけてるのに、神父様は表情一つ態度一つ変わらへん。ウチの幻術も全くかかってないみたいやし……。だんだん自信が無くなってきたやの。 「ウチ、自信無くなってきたやの……」 「元気出してください。誰にでも失敗はありますから」  普通に励ましてくる優しさがつらい! でも、これはウチの技やの。わざと弱ってるところを見せて、こう、頼ってもらえるっていう優越感を味わってる隙に入り込んで、一気にメロメロに! ……今までの男ならできたのに。 「ほんまにウチ、魅了チャーム使えるんかなって思ってきたやの」 「私にかけてるんですよね?」 「そのはずやの。こう、ムラムラして下半身が元気に……」  神父服から着替えてジャージやけど、下半身は全く反応してなさそうやの。  ウチは視線を神父様の顔に戻す。血のように真っ赤な瞳と視線が交わる。ほんまにこの色の瞳の人間は初めて見た。何か魔物の血が混ざってるんかな……。  こういう時は、名前を呼んで質問すると良いやの。 「小焼様って、先祖に魔物がおったりしやん?」 「母がダークエルフですよ」 「へえ。そうなんや。……って、えええええええええ!?」 「あまり大声出さないでもらえますか」 「だ、だ、ダークエルフって、あの、ダークエルフやの? 肌が褐色で、えっちで、お胸がぼいんぼいんの」 「あなただって、それなりに胸があると思いますが、これも幻術ですか?」 「ひゃああ!? これは自前やの!」 「サキュバスなんですから、触られるくらいどうとでもないでしょうが」 「触らせるのと触られるんは別物やのー!」  急におっぱいつつかれてビックリしたやの。うぅ、サキュバスでも、驚くものは驚くんやの……。  それにしても、ダークエルフの血が混ざってるんやったら、魔法耐性があっても納得やの。何かしら魔法が使えそうやし……。 「神父様って何か魔法が使えるん?」 「聖書で殴ったほうが早いですよ」  そうやった。この人、筋力でモノ言わせるタイプの聖職者なんやった……。

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