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 どうせ神父様はウチに背中を向けて寝るはずやの。寝付いたら後ろからギュッとしてグッとして、ビューンやの! 「……あの、こっち向いて寝るんやの?」 「横に可愛い女がいますからね」 「幻術でそう見えてるだけやと思うの……」 「貴女の姿は初めから一切変わりませんよ」 「む、むぅ」  顔が熱いやの。恥ずかしいやの!  何でサキュバスのウチが照れてまうんやの! もうテレテレのデレデレになってしまいそうやの。思わず「好きぃ!」って言いかけてしまったところを喉の辺りでぐっと呑み込む。あぶないやの。ウチがメロメロにされてしまってるやの……。  やっぱりこの神父様、魅了スキル持ってそうやの……。ダークエルフのスキルに魅了があるって聞いたことないんやけど……、隠れスキルであるんかな。不思議なことがいっぱいあって、わからへんの。 「神父様。何かお話してやの」 「寝る前にもなって、聖書を解説しろって言うんですか?」 「そういうのやなくて、なんか、こう、お話して」  呼吸が混ざり合うくらいに近いところにおるのに、ウチは神父様のことをあんまりわかってへん。だから、何か話してもらえたら理解できるかも……。 「貴女は悪魔ですから神なんて信じないと思いますが」 「そりゃそうやの。神は裏切ってくるやの。浮気だってするやの」 「その神が何処の誰をさしているか私にはわからないので、その辺りはノーコメントにしておきます。しかしながら、この『神を信じますか?』という問いかけだけで論争が起こるんですよ。あちこちで、神はいるだのいないだの。そういうくだらないことが」 「神父様ってそういう話してええの?」 「本来ならしてはいけないでしょうね。私は神に仕える身。司祭ですから」 「じゃあ、何でこんな話してるん?」 「貴女が何か話せって言うからでしょう。私が首からさげているアレは、救いの象徴です。あれを見れば『救われる』と感じる人もいます。普段は神を気にしない人でさえ、自らの身に危機が訪れた時、神に救いを求める。わかりやすい記号ですよ」  司祭が言うて良いことやないと思う。  真面目にお勤めしていると見せかけて、実はそれほど信仰心の無い人なんかもしれへん。でも、町の人には信頼されてるし、寄付もいっぱいもろてる……。  神父様の顔が綺麗やから貢物なんかもって思ったけど、ミサに足を運ぶ人を見てたら、本当に神を信じて、神の言葉を聞きたいんやと思うし……、わからへんやの。  ウチがわかるんは、神父様は何かを隠してるってことぐらい。  ――突然、大きな音と地響きがして、棚のものがガタガタ落っこちた。神父様はウチを下敷きにして、ギュッと抱き締めてる。 「何か、良からぬものが来たようですね」 「え。地震やないの!?」 「ドラゴンか人狼……、もしくは悪魔や吸血鬼あたりだと思います。周期的に」  どういう周期やの。  そんで、ウチをギュッてしたことについては何も言わへんの? 護ってくれたんやと思うけど……。 「夏樹が退治に行くとは思うんですが、あいつ、治癒魔法のほうが得意なので攻撃に向いてないんですよね……」  そう言いながら神父様は着替えてる。……ウチもついていったほうが良さそうやの。修道女の服やと動きづらいからサキュバスの標準服に着替える。お洗濯されたから、良い香りがするやの。 「けいって火の魔法が使えましたよね?」 「得意やの!」 「それなら、火の魔法で相手を焼き殺してください」 「……あの、神父様が焼き殺すなんて言うてええの?」 「本来なら駄目でしょうね」  救済するって根本的な考えはないんかも。攻撃的な神父様やの!

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