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 ここは寝てるふりしとこ。このまま襲ってくれたら、万々歳やの。ウチの大勝利やの! 「触らせるのは慣れてるけれど、触られるのは慣れてないんでしたっけ」  ほっぺたつんつんされてるやの。  寝たふり。寝たふり。狸寝入りってやつやの。そのままもっとウチに触ってやの。いっぱい触ってウチを充電させてやの。 「本当に寝てるんですか?」  寝てるやの。寝てるやの。ウチはぐっすりおやすみ中やの。どうぞお好きに身体を触ってやの。 「私は明日死にます」 「何でやの!?」 「やっぱり起きてましたね」 「はっ! だ、騙したやの!?」 「いえ? 明日突然死ぬかもしれません。人がいつ死ぬかなんて私にはわかりません。トラックにはねられて異世界転生するかもしれませんし、トイレに流されて異世界トリップするかもしれませんし、どうなるかは神のみぞ知ります」 「そんなこと言わんといてやの。ウチ、小焼様のこと好きやのに」 「は?」 「え?」  あれ? ウチ、今、何か変なこと言うてしもた? 「サキュバスって、人間に惚れるんですか?」 「今の無しやの! 無しやの! 嘘やの! 冗談やの! 言葉の綾やの!」 「嫌いよりかは……好かれているほうが良いとは思いましたが」  ベッドが軋む。マウント取られてて困るやの。襲われるんは大歓迎やけど、これはちょっと恥ずかしいやの。サキュバスが恥ずかしがるっておかしいのに、恥ずかしいやの! てれてれしてまうやの。 「神父様、あの、ウチ、心の準備が」 「心の準備って何を準備する気ですか?」 「えっちなこと、せぇへんの?」 「私がどうして貴女と性交渉しないといけないんですか。餌は十分にあげたでしょう」  けっきょく餌って言い方になってる……。  神父様は溜息を吐いてウチから下りた。何をするつもりやったんやろ? 襲うつもりやったんかな? ウチ、寝たふり続けられへんかった……。ドキドキのシチュエーションのはずやのに、大失敗したやの。 「神父様、何でウチが寝てるか確認したん?」 「理由は二つあります。一つ目は、貴女がまた勝手に男を求めて出て行かないか確認するため。もう一つは、貴女に渡すものがあったからです」 「ウチに何を?」 「今日一日よく働いてくれたので、ホットミルクを与えようと」  ……けっきょく、牛乳やの。あったかくて砂糖が入ってるかそのままかの違いやの。  そう言ってすぐに神父様は寝室を出て行く。ウチも後ろをぽてぽてついていく。  ウチ用のホットミルクはお鍋でわざわざあっためて作られてる。手間をかけてくれてるだけ、エネルギーが充電されるやの。優しさがあったかいやの。  コーヒーカップを渡されたから受け取って、ふぅふぅしてから飲んだ。  舌の上で転がして、いっぱい味わってから飲み下した。せーえきやったらもっとええんやけど、くれそうにないやの。  真っ赤な瞳と視線がかち合う。 「美味しいですか?」 「美味しいやの」 「それは良かったです」  神父様の表情が緩まる。いつもムスッてしてるから、これぐらい力を抜いててええと思う。キリッとした目がカッコイイとは思うけど、怖いとも思われそうやの。口だって、ずぅっと、への形してるやの。絵に描いたようなへの字口やの。  いっそ、ウチから仕掛けてみたほうがええんかも。神父様の隣に行って、ほっぺたにチュッてしてみた。 「ありがとうのキスやの」 「子供ですか」  あきれられたやの。でも、嫌がってないから、今度からこの作戦でいくやの!

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