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 孤児院でのお仕事も終わって、教会にびゅうううん! と戻ってきた。いつになったら神父様の車は、車検から戻ってくるんやろ……。バイクで振り落とされへんようにしがみつくのも大変やの。  キスしてもらったから、元気げんきやの。シャンデリアのお掃除は終わってるから、天井のステンドグラスでも拭いとこかな。 「神父様。ウチ、あのステンドグラス拭いてくるやの」 「助かります。バケツと雑巾ならキッチンの隅のやつを使ってください」 「はいやの」  服をぽいぽいっと脱ぎ捨てて、いつもの服に戻る。修道女の服は尻尾も翼も出されへんから窮屈やの。  キッチンでお水をバケツに入れて雑巾を放り込む。掃除用具がけっこう置いてあるから、神父様は綺麗好きなんかもしれへん。そういえば、食器棚も整頓されてたやの。冷蔵庫も調味料をこぼした跡すらなかったやの。  ステンドグラスまで飛び上がって、拭き掃除をする。バケツはシャンデリアに引っ掛けておいたやの。綺麗になったら、気分が晴れやかになるやの。ハレルヤってやつやの。意味はわからへんけど。 「神父様。ハレルヤってどういう意味やの?」 「『神を褒め称えよ』という意味ですよ。貴女には関係ない言葉では?」 「全く関係ないやの」  神父様は夕のミサの準備をしてた。ウチ、夕のお祈り中にお掃除してて良かったんかな……。何も言われへんかったから良いことにしておくやの。それに、神様も教会が綺麗なほうが良いに決まってるやの! 「そろそろ人が来るので服を着てください」 「はいやの」 「……思ったんですが、それって制服か何かなんですか?」 「何でやの?」 「いえ。腹が冷えないか心配になったので」  急に優しくしないでほしいやの!  またドキドキしてもうたやの。ただの疑問やと思うのに、その疑問の理由が優しすぎて困るやの……。 「大丈夫やの。ウチのここには、あったかいものがいっぱい入ってるやの」 「牛乳しか入ってないと思いますが」  ……それもそうやの。蓄えがないやの。これやとインキュバスも真っ青になってしまうくらいやの。  かと言って、神父様を誘っても全くつれへんし……、今夜こそ何処かの家の男から搾り取ってやらな。 「あと、どうして靴下の色が左右違うんですか? 紛失したんですか?」 「こういうオシャレやの!」 「洗濯機で迷子にさせたのかと思ってました……」  言い方が可愛いやの。何やの、洗濯機で迷子って表現……!  神父様は見た目が仏頂面やし、つっけんどんやから、変なギャップがあって困るやの。落ち着くんやの。サキュバスがドキドキしてどないするんやの。ウチがドキドキさせなあかんのに! 「ついでに聞いておきたいんですが、貴女って、何が好きなんですか?」 「男がウチの下でとろけてるのを見るのが好きやの」 「自分がとろけるのは嫌なんですか?」  何でか壁際で問い詰められてる。これは、チャンスやの? やっとウチにメロメロになった? ウチの魅了チャームが効いた? 「サキュバスって上に乗るイメージしかないんですが、下になることはあるんですか?」 「ないやの。でも、ウチ、神父様になら、乗られてもええの」 「は?」  ギロッと睨まれて、思わずその場でジャンプしてもうた。  ダークエルフって邪眼持ちやったっけ? なんか、めっちゃ、背中を悪寒がはしっていったやの。 「すぐ調子に乗るんですから」 「神父様なら、ウチ、いつでも大歓迎やの」 「貴女にエサを与えることはありません。ほら、人が来るのでそこに座っててください」  神父様はウチから離れて、準備を再開した。メロメロまでの道は遠そうやの。

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