今年、また高知に来て、その古ぼけた病院に電話をかけ、まだアツコが入院している事を確認して。 花と見舞金を持って、翌日、昼過ぎに訪れたが、病室のドアは開けっ放しで。 ネームはまだかかっていたが、何か違和感があった。 廊下を歩いてきた看護師に尋ねると、先程亡くなったと聞き、啓吾は、ぞっとした。 看護師は、 「誰も親族がいないようで、、。 」 なぜそうなったのか、啓吾がまがりなりにも、小さな葬式をあげてやることになり、、彼女の両親の菩提寺に後を託した。 真知子に秘密にする事でもないようだが、アツコという女と知り合ったのは、クラブであり、、たった2度でも、情を交わしてしまったからこその事で。 言えるはずもなく。 啓吾は妻に秘密を持つという現実に、ぞっとしてしまう。 啓吾は、昨年、偶然会った、名前すら忘れていた遠い昔の女から声を掛けられた、その瞬間から、身寄りの無い元ホステスの女の葬式をあげて見送る運命だったのではと、、薄気味悪くも思ってしまい。 また、身寄りが無いとは寂しい事だと、自分は、共に暮らした時間は短かったにしても、健康で聡明な妻がいて良かった。 子供も2人いて良かったと、深く、深く、初めて、妻の真知子に感謝した。 4月半ば、札幌はまだ桜も梅も咲かない。梅と桜が同時に咲くというのも面白く、桜が散ってしまうと、その後は百花繚乱になる。 多くの花々が目にまぶしい季節になる。真知子が札幌をこよなく愛する所以でもあるらしく。 合理的、合理主義の真知子らしい。 ぱっぱと、まとまって咲いて、さっと散る。 高知に限らず、四国は4月は暖かい。 札幌とは15度は違うだろうか。 今年は四国遍路も2度目になる。 2週間ほど、ゆっくりゆっくり歩き、自分の来し方を考えてみようと思う啓吾だった。 🥀
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