翌水曜日。大学から急いで札幌駅の中をくぐり抜け、北から南へ。 駅から少し南へ歩き、1丁だけ西に。 そこに真知子の自社ビルになる、真っ白い外観の11階建てのビルの1階に母の会社が入っている。 一般の不動産屋のように、賃貸物件の広告を窓ガラスなどに外から見えるように貼り付けたりはしていない。 それが、母の主義。 匠不動産と重厚なイメージの縦書きの看板はあるが、中に入ってしまうまでは、賃貸物件を扱ってはいない不動産屋にも見える。 そこが、母が狙ったイメージのようだった。 母は商才があるようで、父は、お母さんはお父さんの3倍の収入があると、よく言っていた。 生真面目な父が、 そのような微妙な事について、娘に冗談を口にするはずもなく。 祖父も既に来ていて、奥の応接室を指差し、2人で中で待つ。 相談者については、だいたい昨夜のうちに祖父から聞かされていた、。 何故、沢山の問い合わせの電話の中から、祖父がAさんを選んだのかの理由も聞いていた。 祖父は、人間関係の中で、しがらみは辛いかも知れない、理屈で説明がつかない感情だからと。 真偉はよくは解らなかったが、祖父も同席してくれるので、会ってみようと決めたのだが。 14時きっかりに、相談者は現れた。 夫婦揃って現れ、2人ともに悲壮な表情をしていて、挨拶をして、真偉と祖父の対面に2人が座る様子を見て、真偉はすでに、2人共に四角四面の真面目過ぎる、融通のきかない性質を見抜いていた。 夫婦揃って、膝をきちっと合わせ、手はその上にのせている。 電話をしてきたのは旦那さんの方らしいが、奥さんの方が疲れ果て、顔色も悪い。 祖父は何も言わない約束だった。 真偉は、心配している夢について話して下さいと言うと、、Aさんは、低いがハッキリした声で、何日も続いて朝方見るという夢の話を始めた。 「2週間ほど前から。 初めは気にならなかった。 階段を上る、どこまでも続く階段を汗を拭きながら上る。 目が覚めると、ひどく汗ばんでいた、 。 次の日は、螺旋階段。 上ったり、下りたり、、はっと気付くと階段は消えていた、、。 どうしようと思った瞬間、目が覚め、布団の中で震えていた。 」 最後まで聞いて。 毎日、毎日、階段の夢を見ていたようで。 奥さんは、いつも、朝方に突然起き上がる夫で、すっかり寝不足になったと言い。 真偉は、話している間のAさんの心を、旦那さんが話している間の奥さんの心を、じぃーと、神経を集中して見て、聞いて、読んでいた。 まるで、堂々巡り。余りに辛過ぎる状況で。 ただ、解決法は、2人共に、気付いているのに。 真偉は、心を読める能力は誰にも話していない。 家族は、読めるのではと憶測しているだけで。 真偉は隠し通すつもりである。 だからこそ、心理学を学んでいる。 学問の中で能力を生かせるかもしれないと。 どのように説明しようか、、真偉は、目を閉じ、真剣に考える。 🥀🥀🥀
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