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真偉の夢占い・春に誘われて1

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 春の気配に嬉しくなる。  春を迎える喜びは雪国の人間にとっては、夏以上のものがあるのではないだろうか。  重いコートを脱ぎ捨て、街には柔らかなパステルカラーが目立つようになり。    朝、新聞を門の新聞受けまで取りに行くのは真偉の仕事、早朝の空気の匂いは冬とはまるっきり違う、もやったような春のもの。 木々の芽吹きも匂いに混じる。  待ちに待った春の訪れに嬉しくなる。 真偉は、その春の匂いが好きだ。  春が訪れ、何かが変わる訳でもなく、それは、北国の人間ならば、だいたいが同じような感覚で、心踊るのではないだろうか。    真偉は、いつも自分自身をもどかしく思っている。  すでに、20才で。  世間では、一応は大人であるはずなのに、一向に自分は家族に頼りっぱなしで。   今後は、どのように生きて行く、いやいや、どのような仕事をしたいのかさえ、決まっていない。   周囲の人達は、おおよそ、どんな人生を送りたいか、どんな結婚をしたいか、どんな仕事をしたいか、などなど、口にしている。  本音ではなくとも、皆、夢心地で、あるいは自信満々に口にする。   真偉は、口を閉じる。何も決まっていないし、自信もなく。   下を向いてしまう。    真偉は母方の祖父母と両親、5才上の兄との6人家族。    家族は真偉以外は極めて強気で、そんな家族の中にあり、引っ込み思案でおとなしく、口数の少ない真偉は余計にうち沈んで見えるようで。     友達を求めず、一人でいることの多い真偉は、寂しそうに見えるのか、小さく華奢なせいもあるのか、家族は過保護過ぎると思える程に真偉を守ろうとする。   過保護は子供から自立心を奪い、依頼心の強い人間にしてしまう、そのような事は熟知しているはずだっが。 外面がか弱く見える、しかし、真偉自身は一人でいる、一人で行動する方が気が楽で、つまるところ、特に病弱でもなく、気持ちは強い方だと思っている。  人間の観察力というのは、不思議なもので、小さくて華奢な真偉の外見だけで、内気で気が弱く、思っている事も言えない、身体も弱く、と、すっかり弱者のレッテルを貼ってしまう。   真偉は自分に向けられる、少し同情を含んだ目、同じ年頃の同性の意地の悪い目、それらを感じて、徐々に人間を避けるようになっていた。  春休み中、夕食作りを買って出た真偉は、祖母や母に教えてもらいながら、毎日、楽しく夕食作りをしてた。   心を込めて。計量カップやスプーンで、調味料を計るより、自分の指先や味わう感覚を研ぎ澄ませて。    母も祖母も仕事を持っている。  忙しい中でも、2人は食事作りに手を抜かなかった。   人間にとって食べる事は最も大切な事と。    医食同源という言葉を頭におきなさいと。     春休みといっても、出掛ける約束も用もない真偉は暇だったから。 食材を買う楽しみも覚えた。    大学では、バイトの話は日常茶飯事で、しかし、真偉はアルバイトはしたことがない。     一度、アルバイトをしてみようかと話すと、両親も祖父母も兄も、驚いた様子で、     「お小遣いが足りないの? 」  「言えばいいのに、、」 「小遣いだったら、ほら、やるぞ、、。」    真偉は、ある意味で、社会勉強をしてみたかった、周囲の人達のように、自分で働いて、収入を得る、それは、わずかであっても、経験してみたかったにすぎないのだけれど。        洋服は決まったショップで母が買ってきてくれる。  ナチュラルでSサイズが揃っているショップ。     祖母は自分が懇意にしているブティックで、季節、季節にレトロで正統派のワンピースやスカートやジャケットを誂えてくれる。    真偉は、自分が望む前に何でもかんでも揃っていて。    だから、物欲もないのかもしれない。     冬のコートだけでも5枚、いや、ハーフコートも入れると、7枚。   ブーツやスノーシューズだけでも、随分有り、春休み中はしっかり冬靴の手入れをして、箱に入れしまいこんだ。    男子学生は、そのような事は言わないが、同性の女子学生は、   「オジョウなの!? 」 「すごくない?! 」 「 靴みた?! 」 「 あれ、すごい高いのに、、」 「先生達も一目置いてるよね、、、」 「なんか、、特別扱いだよね、、」 「オジョウなの? 」      真偉は、周囲の人達のささやきの中の毒気がイヤだった。      先生に意見を言うように言われ、思うところ、考えるところ、正直に言うと、大概、先生達は茫然とした表情で、、、、 「きみは、、素晴らしい!! 」  と感嘆する。            🥀    

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