図書室の井口先生
図書室の井口先生-7

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 井口先生が言っていたことはすぐに分かった。いつもなら鎖が繋がれていて、入れないようになっているはずの緑の森が、今日は開いていたのだ。 「入れんようになっているのは放課後から夜にかけての時間だけなんやで」 入り口を潜る時、井口先生は唯にそっと耳打ちした。 「そうだったんだ」 「これ他の人には内緒やでえ。指導部の山田先生から、おまえ生徒にいらんこと教えるなって怒られるのはごめんやからなあ」 山田先生は、唯たちの体育の先生でもあって、怒るととても怖くて厳しい先生なのだ。 (そっかー、井口先生も、山田先生が怖いんだ) 唯はそう思いながら頷いた。  森の中は、ひんやりとして涼しかった。木の葉がさわさわと、風に靡く音に交じって、遠くの方で、チャイムが鳴る音が聞こえてくる。どうやら1時間目が終わったようだ。  チャイムが鳴っても、唯はもう慌てなかった。井口先生と居る時間が、だんだん楽しくなってきたからだ。 「なあ、何でこの森に入れんくなったか知っとるかあ?」 でこぼこした道を歩きながら、井口先生は唯に尋ねた。 「いいえ、知らないです」 「俺は知っとるでえ」 「えっ?」 「聞きたいかあ?」 「ちょっとだけ」 少し考えてから、唯は答えた。 「そうか、分かった。でもその前に、おまえ、怖い話はだいじょうぶかあ?」 「たぶん、だいじょうぶだと思う」 「よっしゃあ」 少し歩くと、井口先生は、大きなプラタナスの木の前で立ち止まった。そして話し始めた。

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