図書室の井口先生
図書室の井口先生-2

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(どうして私たちの教室に、図書室の井口先生が居るんだろう?) 教室のドアを開けたまま、唯は呆然とその場に立ち尽くしていた。井口先生は教卓に座ったまま、こちらをじっと見つめている。 「あの、井口先生?」 「おー、せやで」 唯は図書室は好きだが、井口先生はあまり好きではなかった。大柄な体に、両耳にはピアスという、どことなく派手なファッション、そして唯が住んでいる町では、あまり馴染みのない関西弁。そのどれもが、唯はとても怖かった。 「どうして、図書室の井口先生が、ここに…」 「そんなとこにつったっとランではよ席に座れや」 唯の質問を遮った井口先生の声に、唯の体が思わずびくっとなる。そう、その喋り方が怖いのだ。 (帰ろうかなあ) そう思って振り返ろうとした時だった。 「おいどうした?もしかして先生が怖いのかー?」 (えっ?!) 井口先生に聞かれて、唯はその場で思わず固まってしまった。自分が思っていることを、見事に言い当てられてしまった井口先生が、さらに怖いと思ったからだ。 「まあな、怖いと思うのも無理も無いかもしれんなあ。今この教室は、俺とおまえ以外誰もおらんのやからなあ」 (そうだ、そう言えば!) 自分の教室に、なぜか図書室の井口先生が居ることに気を取られていて忘れていた。今この教室には、自分と井口先生の他には、誰も居ないことを。 「あの、他のみんなは?」 か細い声で唯は尋ねた。 「とりあえずはよ席に座りな。話はそれからや」 そう言って井口先生は、唯を教室の中へと促した。  唯は小さく頷くと、覚悟を決めたように、教室の中へと1歩足を踏み入れた。

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