図書室の井口先生
図書室の井口先生-3

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「ところでおまえ、誰やったっけ?」 自分の席に向けて、机の間を歩いている唯に、井口先生は尋ねた。 (先生、私の名前知らないの?毎週図書室に来ているのに?) 唯は少しショックを受けた。 「4年2組の水野唯です」 「おーせやったせやった。あははははーっ!」 井口先生は、大きな口を開けて豪快に笑った。 「おい、おまえの席そんな遠いのか?」 唯が自分の席に着いたのを見て、井口先生が言う。 「あーっ、はい」 唯はそう答えながら、机の横にあるフックに、背負っていたランドセルをかけた。 「めっちゃ遠いやん。今日はどうせ俺とおまえ二人しかおらんのやから、おまえこっち来い」 席に座ろうとする唯に、井口先生は、教卓のすぐ手前の机を指さしながら提案してきた。 「えっ?」 唯は井口先生が指さしている机を見て、思わず目を伏せた。そこはちょっと苦手な理恵子ちゃんの席だったからだ。 「じゃあいい。俺がそっち行く」 理恵子ちゃんの机から目を伏せた唯に、何かを察したのか、井口先生は教卓から立ち上がると、唯の方へと近づいてくる。  普段は図書室のカウンターに座っているので、あまり意識していなかったけれど、改めて井口先生は背が高いなあと思った。身長は180センチぐらいはあるだろうか。 「うわっ、めっちゃいす低いなあ」 唯の向い側の美佳ちゃんの席に座ろうとする井口先生が、驚いたように声を上げた。 (そりゃそうだよ。だって先生背が高いんだから) 唯はそう思ったけれど、やはり井口先生が怖いので、何も言えなかった。 「おまえ、ラッキーだったなあ」 美佳ちゃんの席にどうにか腰を落ち着けると、井口先生は唐突に言った。 「えっ、ラッキーだったって?」 「おまえ、昨日学校休んだんやろ?」 井口先生にそう聞かれて、何だか急に胸の中がむずがゆくなるのを感じた。 「はい」 唯は小さな声で答えた。そんな唯に向けて、井口先生は、こう話しを切り出した。

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