図書室の井口先生
図書室の井口先生-8

作品に栞をはさむには、
ログイン または 会員登録 をする必要があります。

「今から20数年前、この森で大きな事故があった」 「大きな事故?」 「そうや。なんでも4年生の子供ら数人で、かくれんぼをしとったんやてえ」 (4年生…、私たちと同じだ) 唯は心の中で呟いた。 「そいつらのやるかくれんぼには、鬼は必ず目隠しをするっちゅうルールがあってん。んでな、その数人の中に、いじめられっ子だった男の子が一人おってなあ」 井口先生は、そこでいったん言葉を切ると、目の前のプラタナスの木から目を反らした。そして再び語り始めた。 「ある日のことや。その男の子が鬼になった時、やつらは隠れるふりをして、そいつをこの森に置き去りにして帰ってしもうたんや」 「えっ!」 唯ののどから、思わず声が出る。 「その男の子は、当然自分が置き去りにされているとは知らず、みんなを探しに森の中を歩き回りおったんや。でもいくら探しても、誰一人も見つからない。目隠しもされているから、だんだん怖なってきたし、焦ってきたんやろなあ。ひょっとしたら、木の上に隠れているかもしれない。たぶんその男の子はそう思って、その時丁度目の前にあった、プラタナスの木によじ登った」 そこまで話すと、井口先生は、目の前にあるプラタナスのてっぺんを、仰ぐように見上げた。 「もう少しでてっぺんというところで、突然強い風が吹いた。その風でバランスを崩して、その男の子はプラタナスから落っこちて、頭を強く打って死んだんや」 そう話す井口先生の声は、とても静かで、でもどこか寂しそうにも聞こえた。  井口先生の話はさらに続いた。

応援コメント
0 / 500

コメントはまだありません