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 ばれないようになんて、考えが甘いかもしれない。 (でも、精一杯努力しよう)  とてもではないが、雅と離れられないから。  彼の柔らかな髪を撫で、耳や頬に頬ずりをして感触を確かめた。男性とは思えない甘い香りに溜息が漏れる。 「暁翔……」  雅が恥ずかしそうに頬を染めた。  かわいくて堪らない。込み上げる愛しさが抑えられず、唇に触れるだけのキスをした。  静かなリビングに、チュッとリップ音が立つ。  唇を離すと、雅の顔がのぼせたように真っ赤になっていた。耳も赤い。目は焦点が合っていない。 「み、雅!?」 「ふえぇ……!」 「大丈夫か?」 「キ、キスって……は、初めてだから……」  目を回しながら後ろへ倒れそうになった雅を、慌てて抱き留めた。 「ごめん。いきなりで」 「ううん。僕、いい年なのに何も知らないんだ。恥ずかしいな」  誰も好きにならないと決めて、ずっと恋から目を背けていた雅。それはつまり、全て暁翔が初めての相手になるわけで……。  正直、嬉しすぎる。 「恥ずかしくなんかないよ。俺のために取っておいてくれたんだよな?」  冗談めかして言うと、雅が「えへへ、そうだね」と照れたように微笑んだ。  やっと見られたかわいい笑顔に、胸がきゅうっとときめく。桜の花がふわりと咲いたような、大好きな笑顔。見ているだけでこちらも自然と笑みがこぼれる。  暁翔は雅の両肩に手を添えた。 「もう一回したい。目、閉じて?」 「ふぇっ」  雅がビクッと肩を震わせた。 「な?」 「う、うん」  強く目をつむった彼の顔には、ドキドキで死にそう! と書いてあった。  そんなところもかわいい。吸い寄せられるようにキスをした。  柔らかな唇を食む。体中が嬉しさで熱くなる。心があたたかな幸せで満たされていく。キスがこんなにも嬉しいものだったなんて。 (俺も、何も知らなかったんだな)  和菓子より、チョコレートより甘い夜が更けていく──。 

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