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 暁翔は渋い表情ながらも頷いた。 「わかったよ。演出、やるよ」 「おお! おおきに! 我が友よ!」 「うるせえよ、今回だけだからな」  京介に無理矢理握手をさせられていると、玄関のチャイムが鳴った。  きっと雅が来たのだろう。立ち上がって玄関に向かい、引き戸を開ける。 「暁翔、たこ焼き買ってきたよ!」  雅がパッと破顔してビニール袋を持ち上げて見せた。暁翔も自然と笑顔になる。張り詰めていた気持ちがなごんだ。 「お、いい匂いだな」 「今日ね、商店街で夏祭りをやってるんだよ。小さいけど賑やかなお祭りなんだ」 「後で一緒に行ってみる?」 「一緒に? 行きたい!」  子どもっぽく喜ぶ雅がかわいくて、暁翔は目を細くした。雅の愛くるしさをしみじみと感じる。 「そうだ、京介を紹介するよ」  振り返ると、呼びに行くまでもなくドタバタと京介が現れた。 「どうもー! 松本でっす!」 「ど、どうも、花江です……」  京介の圧に押された雅が萎縮する。 「暁翔、まさかこの子が……雅ちゃん?」 「そ、そうだよ」 「へえ!」  京介は一瞬目を見開いたが、やがてニヤニヤした笑みを浮かべた。 「なるほど、かわいい系か」  値踏みするような視線を向けられ、雅がますます萎縮する。 「おい、あんまりジロジロ見るな」 「見てええのは俺だけやってか? さてはおまえ、ベタ惚れやな?」 「バ、バカ! 何言ってんだよ!」  暁翔の顔が赤くなった。誤解されるようなことを言うのはやめてほしい。平常心を保てなくなる。 「すまんすまん。なんか俺、お邪魔みたいやな。帰るわ」  京介はそそくさと靴を履き「後で連絡するわ。雅ちゃん、ごゆっくり」と言って堂島家を出て行った。 「僕のほうが……邪魔しちゃった?」  雅が上目遣いで恐る恐る問う。 「全然。晩飯、まだだろ? 一緒に食べよう」  料理をする雅を手伝いつつ、暁翔は京介について簡単に説明した。劇団の主宰者で役者だと言うと、雅が「なんだかすごく、存在感のある人だったね」と言った。  そうなのだ。京介はイケメンではないけれど、舞台に立つと人目を引く。暁翔にはない役者としての魅力を持っている。脚本を書く才能も。  食事中、雅が二階の物置部屋にある芝居の衣装の中に浴衣があったと言うので、せっかくだから浴衣を着て祭りに行こうという話になった。  食後、物置部屋を捜索して見つけたのは、男物と女物の浴衣が一枚ずつ。  暁翔は「俺は洋服でいいから」と言って雅に男物を渡した。だが「僕が女物を着るね」と言って返される。 「おいおい、女装する気か?」 「女装っておもしろそうだから、一回やってみたかったんだ。着つけ方、ネットで調べてみようよ」

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