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「それでも、このまま黙って友達を続けるのは無理だ」  溢れ出しそうな想いは、抑えきれないほどに膨らんでいる。それを隠して友達を演じ続けるのは、難しいのではないだろうか。 「じゃあ、うまくいったらつきあい始めるんだ。男の人と……」 「まあ、そうだな」  もし振られたら、地の底まで落ち込みそうで怖い。どうかうまくいってほしい。  祈るような心持ちでいる暁翔を、梨乃が怖い顔で見据えた。 「ほんとにそれでいいの?」 「梨乃……?」 「男の人とつき合ってるのが周りに知られたらどうするの? 世間から白い目で見られるかもしれないんだよ? 怖くないの?」 「おい、あんまり責めるなや」  京介が制しようとしたが、梨乃は構わず続けた。 「暁翔は今まで普通に女の人とつき合ってたよね? なのになんで男なの? わざわざ大変なほうを選ばなくてもいいんじゃない? ゴシップ記事に書かれてる一般人のコメント読んだ? 気持ち悪いって書いている人もいるのに」 「梨乃、言いすぎや!」 「だって!」  二人がけんか腰になり、暁翔は慌てて間に入った。 「俺も最初は戸惑ったんだ。次につき合うなら結婚を考えられる人がいいと思ってたしさ。だから好きになったのが男なんて、自分でも信じたくなかった。でも……あいつのそばにいたいとか、あいつのために何かしたいとか、どうしてもそういう気持ちが湧いてくるんだよ。どうにもならないんだ。どうにも……」  初めて落ちた本気の恋は、他人から白い目で見られ、気持ち悪いと言われる恋。悲しく、悔しいけれど、少数派は偏見や差別の対象になりやすい。それが世間というもの。自分だってかつては同性愛者を特別な存在だと思っていた。  京介が溜息をつき、静かに言った。 「お互いに好きならつき合う。それでええやんか。世間が何と言おうと、俺らが味方でおればええんや。大体な、今どき同性愛に偏見なんか持つなや」  京介の思いが胸にしみる。  暁翔は「ありがとな……」と呟いた。  しかし梨乃は首を横に振った。 「二人が一般人ならそれでいいかもしれない。だけど雅ちゃんはアイドルでしょ? アイドルにとって一番NGなのは、恋愛のゴシップじゃない? もし二人がつき合いだして、世間にばれたら?」  聖哉と雅のゴシップ記事は、大抵の人がガセネタだとわかるようなものだった。ファンも信じていないし、事務所は話題になると言って黙認している。  だが本物の恋人の存在がばれてしまったら……。 「ファンは激怒すると思う。雅ちゃん、ものすごく叩かれるかもしれないよ?」  長年雅を応援してきたファンは、失望するのでは。恋人が男性では、裏切られたように感じるのでは。  事務所も怒るだろう。フロントに加入したばかりで不祥事を起こすなんて、アイドルとしての自覚が足りないと。  問題を起こしたフロントのメンバーは、降格になるのがキラリボーイズのルール。せっかく夢を叶えたのに、雅はまたバックダンサーに逆戻りするかもしれない。最悪、クビになる可能性もある。  最近のキラボは聖哉と雅のコンビが受け、以前よりメディアへの露出が増えていた。ハワイでPVを撮影できるほどに、上昇気流に乗っている。  そんな大事なときに告白をしていいのか。 (だめ、なんじゃないか……?)

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