そして威嚇するように男達を見下ろした。彼らより上背があるので、迫力が出るのはありがたい。 男達から見れば年上の、長身でクールなイケメンに見下ろされている状態だ。サッと顔色が変わり、口元を引きつらせる。 「な、なんでもないっす」 「彼氏持ちかよ、行こうぜ」 悔しげな様子で、男達は人混みに消えた。 暁翔は胸をなで下ろした。 雅が男だとばれなくてよかったと思う気持ちの他に、とにかく、他の男にとられなくてよかったという安堵もあった。 「大丈夫か?」 「うん。男だとばれたらどうしようって、ヒヤヒヤしちゃった。助けてくれて、ありがと」 「いや、俺も焦った。もう帰ろう」 いたずらの時間は終わり。これ以上ここにいて、雅がキラリボーイズのメンバーだと知られるのも厄介だろう。 暁翔は綿飴を食べ終えた雅を伴い、商店街の出口に向かった。 「ちょっと……待って」 雅に、浴衣の袂を掴まれる。 「どうした? 何かほしいものがあるのか?」 「ううん。あのね、はぐれたら困るし、だから、あの……」 「ん?」 雅が恥ずかしそうにうつむき、耳を赤くして消え入りそうな声で言った。 「手……繋いでほしい」 いたずらのノリや、冗談とは思えない口調。 必死に、勇気を振り絞って発した言葉だと感じる。 ドクンと、暁翔の鼓動が跳ねた。 「手……?」 「や、やっぱり、嫌だよね……」 雅は下唇を噛み、振り切るように急ぎ足で歩き出した。 「雅?」 「ごめん。今の忘れて!」 「待てよ!」 慌てて追いかけた。女物の浴衣を着ている雅より、男物の暁翔のほうが歩幅が広い。すぐに追いつき、暁翔は雅の手を取った。 「またさっきみたいな男に絡まれたら、困るもんな」 雅の右手を、左手で握る。 「……いいの?」 頷き、緊張しながら、握る手にぎゅっと力を込めた。鼓動がドクドクと速くなる。 「帰ろうか」 頬を赤らめた雅が、コクンと頷いた。 そのままゆっくりと商店街を歩き、団地の坂道を登った。 繋いだ手が熱い。嬉しいような、気恥ずかしいような、複雑な感情が顔を紅潮させる。 雅も緊張しているようで、互いに目を合わさずに黙々と歩いた。 人と手を繋ぐだけでこれほど緊張するのは、生まれて初めてだ。俺は中学生かよ、と暁翔は脳内で突っ込んだ。 自宅の門扉を開けて庭を横切り、玄関の引き戸を開ける。そろそろ手を離すのが自然だろう。しかし離すのが勿体ない気がして戸惑う。
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