初恋の庭で
1 - 1
僕が小学生の頃、近所に大きな家があった。同級生の女の子の家で、友だちと一緒に何度か遊びに行ったことがある。 僕は密かにその女の子に憧れていたんだ。すごく綺麗な子で声もかわいくて、とにかく好きだった。 その子の名は愛の夢と書いてめぐむ。あれから何十年も経っているのにまだ覚えている。 その家の庭には大きな木があった。銀色の葉っぱがちょっと変わっていて、下に立って見上げていたら、横から「ギンドロというのよ」と、愛夢ちゃんが銀色の木の名前を教えてくれたっけ。 ギンドロの下には噴水があった。少女の像をかたどったもので、周りにそんな洒落たものを置いている家はなかったからとても珍しかった。僕はその石像の少女と愛夢ちゃんがよく似ていると思った。
応援コメント
コメントはまだありません