真夏のコスモス
三 一枚の葉で知る(12)

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「結局は、各々がその先を見ることができるかなんだよな」 「その先……個人の課題を乗り越えて終わりじゃなくて、それがチームの力になってるがどうか、か」 「そう。勝てない努力をしても意味はない。ろくに通用するかもわからないナックルボールを練習しても、それに夏まで時間をかけて使い物にならなかったら、本末転倒ってわけだ」 「本末転倒か……なるほど」 「だから、そういうちゃんと繋がっていく練習をしたいなって思うかな」  唐崎がそう言った瞬間、僕達のいる空き教室に予鈴が鳴り響いた。あと五分で、昼休みが終わる。 「繋がっていく練習って?」 「それは、これからみんなで考えるんだよ。俺もそんな、いきなり思いつかねぇし」  唐崎は立ち上がってぼやくように言う。 「どう、久々の真面目バージョン」 「常にそれで居てくれると助かるんだけど」 「無理だよ。練習しんどいじゃん。守山も監督もうるせーし。あ、これは言うなよ? まあ、俺は俺のペースでやるのが性に合ってるんだよ」 「それでチームの力に繋がっているか?」  唐崎はにやりと笑みを浮かべた。わざわざ口に出すほどでもない、という顔だった。 「当然だろ。俺が完封すりゃ、負けることはないんだから」  お前はそのままで頑張り続けてくれ、と半分笑って答えて、僕らは互いの教室へ向かう。  上々な滑り出しだった。これから部員みんなに時間をもらって、こんな話をする。どうなるかと思っていたけれど、唐崎からは唐崎らしい回答が聞けた。北小松も、まさに個性的な感覚を持って野球と向き合っているようだった。  他のみんなからも、みんならしい話が聞けるだろうか。みんな正直に、真っ直ぐに話してくれるだろうか……。 「そんなこと心配しても仕方ねえだろ」  守山は吐き捨てるように言った。 「余計な言ってると十分休憩終わっちまうぞ。早く本題に入れよ」  守山は唐崎と違い、授業の合間の短い休憩時間を使うことにした。  元々そんな時間を使う予定はなかった。唐崎だけは読めなかったから昼休みにしたが、他は数分で終わる内容にしようと思っていた。 「練習内容、みんなの意見まとめて少しずつ変えているけどどう思う?」 「いいんじゃねえの。監督も受け入れてくれてるし」 「みんな、これで良くなるかな」 「そんなことはわからないけど、何もやらないよりマシだ。何だ? お前のカウンセリングか?」 「違う違う、意見を聞きたいんだ。僕達は敗者復活戦を勝ち抜く力はある。ただ、強豪って言われているところや、ちょっと名のあるピッチャーに当たれば負ける。秋の大会は終わったけど、全部そんな感じばっかりだったなと思って」  守山は苦々しい顔をした。記録や試合展開だけ見ればあっさり負けた試合になっているが、それが悔しくないわけがない。何にもならなかった試合内容に、むしろ悔しさを感じているはずだ。 「原因は明確だろ。練習不足だ」 「それはその通りだ。ただ僕は、原因だけじゃなく、打開策を見つけたい」  守山は少しの間黙り込んだ。僕は何も言わずに待つ。きっと何かを考えている。その思考の邪魔はできなかった。

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