真夏のコスモス
三 一枚の葉で知る(7)

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「珍しいね」 「何が?」 「電話しようだなんて」 「いや……まあそれは、お互い様ってことで」  家に入って、飯を食って風呂と素振りを済ませて、いざ冷静になると確かに同じことを思う。僕は珍しいことを言っていた。少し恥ずかしかったが、そう思われてしまう方が恥ずかしく感じた。  どれぐらい電話に時間がかかるかわからなかったため、以前と同じく諸々済ませて最後に電話することにした。もうすぐ日付が変わる時間帯だったが、河瀬はいいよ、とうさぎスタンプ一つで快諾してくれた。 「今日のミーティング、どうだった?」 「練習内容とか私よくわからないけど、みんな結構話してて良かったんじゃない?」 「メモの内容、写真で送ってくれる?」 「いいけど、じゃあこれ何の電話?」  言葉に詰まった。何も、そんなにきつい口調で言わなくても……。 「いや、別に嫌なわけじゃないけど、単純な疑問」  回答に窮していると、向こうから話を続けてくれた。僕は俄然ほっとする。 「ごめん、別に電話じゃなくてもまあ事足りるっちゃ事足りるけど、その、感想聞きたくてさ。直接」 「ふーん。じゃあついでに一つ訊いていい?」 「いいよ、何でも」 「個人面談って、私もあるの?」 「……やりたい?」 「近江君にとって意味があるなら」  少し考える。河瀬までは、必要ないだろうか。 「まずは選手からやるよ。必要かなって思ったら、その時また話す」 「わかった。何か近江君……変わったね」 「それは褒め言葉として受け取っていいのかな?」 「褒めてます」  河瀬も関係あるよ、とは言わなかった。あの日、コスモス園で河瀬と会ったことがきっかけだったとは、言えなかった。  その後業務連絡的な会話を簡単にする。本当に、どうして電話しようなどと言ったのだろうか、と思えるほどたいした話にはならなかった。 「もう、秋だな。早いよなぁ。キャプテンになってもうすぐ二ヶ月だぞ」  話がひと段落ついて、僕は最後にぼやくように言った。特にまだ話を続けようなどとは思っておらず、ただ口から出てしまっただけの言葉だっ た。 「あのさ、どうでもいいこと訊いてもいい?」 「いいよ、何でも」 「近江君、みんなからアキって呼ばれてるけど」 「うん」  河瀬が口にした僕の呼び名が聞き慣れなくて、少しどきっとする。アキ。秋ではない。アキ。 「永原さんも呼んでるの、何で?」  えっ、と動揺の声が出そうになった。別に何も予想してなかったけど、さすがに予想外の質問だった。

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