真夏のコスモス
三 一枚の葉で知る(3)

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 授業間の短い休憩時間になると、近江、とサッカー部の友達に呼ばれた。どうやら一年生が二人、僕を呼んでいるらしい。 「練習メニューか?」 「はい。昼休みに準備するんで」 「バッティングゲージだけ出しといてくればいいよ。二つな」 「わかりました」  用件は簡潔に伝えたはずだが、二人はまだ去ろうとしない。聞けよ、とお互いに何かを牽制し合っているのを見て、なんとなく察する。 「あの、近江さん」  ちらり、と二人の視線が教室の奥を向く。 「あの人、彼女ですか?」 「違う」  用意していた答えを告げて、僕はくるりと背を向けた。まったく、どいつもこいつも。  その後、もう一つ授業を受け、やがて昼休みになると、僕は弁当を持って席を立った。どこ行くの? と桜乃に訊かれ、守山んとこ、とだけ答える。机借りてもいい? いいよ。必要最低限の、短い会話。  桜乃が一緒に弁当を食べる友達を呼んでいるうちに、僕は教室を出て行く。  廊下で一年生とすれ違い挨拶され、村野監督を見かけて挨拶をした。学校始まったな、とわかりきったことを今更思う。夏休みは終わったのだ。 「ミーティング?」  守山に言ったのに、唐崎が答えた。僕達三人は、机を囲みながら弁当を食べ、いつもより幾分真面目な顔をして話し合う。  僕は授業中にせっせと考えていたプランを二人に話した。唐崎が、面談みたいじゃねーか、と茶々を入れた以外、二人共しっかり聞いてくれた。守山に意見を求めると、弁当の最後の一口を飲み込み、うーん、と低く唸る。 「まあ、個別の面談はお前が好きにやってくれたらいいけど、全体ミーティングは定期的にやった方がいいかもしれないな」 「定期的に、か。試合前とかじゃなくて?」 「ああ。一週間の振り返りをみんなでしても面白いかもしれない」 「月曜とか?」 「いや、しっかり練習ができる土日の前……金曜の練習後とか」  良い提案に思えた。唐崎は何も考えていないような顔をして、僕と守山を交互に見ているだけだった。 「一週間を振り返って、土日で補強していくって感じか。うん、いいな、計画的で」 「強豪校みてぇじゃん」  唐崎は何も考えていなさそうな意見を一言だけ言った。そして鞄から新しいおにぎりを取り出して、まだ食べ続ける。  これで、何か変わるかな。ぽつりとこぼすと、守山がその呟きを拾ってくれた。そして、心強いことこの上ない、僕の心にど真ん中直球みたいな言葉を投げ込んでくれる。 「やってみなきゃ、わからないだろ」

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