真夏のコスモス
二 夢に落ちるその刹那まで(10)

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「誰! あの可愛い子! あんた、桜乃ちゃんの他に、桜乃ちゃんがいながら、あんたって男は!」 「落ち着いて叔母さん。知り合いのおばさん感がすごいよ」 「ほんとならぶっ飛ばしていたけどあの子が誰か教えてくれたら不問にしてあげる! 誰?」  奈央姉が何も言ってこず、ただにやけているのが気に障る。  僕は渾身の面倒臭さと共に言葉を吐き出した。 「うちのマネージャー」 「うちのだって! 何、あの子が試合のスコア書いてんの? 行く行く、私絶対試合観に行く!」  騒がしい京子さんの隣で、ようやく奈央姉が一言。 「名前は?」  そういうのを知ってどうするんだ、と辟易の息をつく。 「河瀬」 「下の名は?」 「冬加」 「ん? とうか?」 「そう。冬に加えるで冬加」 「あんなに夏が似合う子で冬加ちゃんか……いやぁ、冬が恐ろしいね……」  何を言っているんだろう。ていうか二人揃ってテンション上がりすぎじゃないですかね。珍しいのはわかるけれども。 「もう行こうよ。暑すぎて、死にそう」  次の休憩処で今度こそ冷たいものを買ってもらおう。再び歩き出すと、ケータイがぶるっと震えた。  画面を見ると、河瀬からのメッセージだった。ロック画面に表示される文面はちゃんと読んでないけれど、返信は後にすることにして、ポケットに突っ込み直す。 「京子さん」 「なーに?」 「アイス」 「溶けちゃった」  だから言ってるんだよ。僕はそう呟いて先に歩き出す。背中に二人の声が届く。多分、聞こえるように話しているんだろう。 「あの子、変わったね」 「年頃の子は変わりやすいから」 「奈央ちゃんもそうだったしね」 「あの時は……まあ、そうだなぁ。すごい相談してたよね、私」 「可愛い姪っ子のために、京子さん頑張ったんだよー」 「その節は、お世話になりました」 「秋仁もまた、お世話するかな?」 「うん。きっと、私と似ていると思うよ」  奈央姉は、一旦言葉を切った。結局、わざと僕に聞こえるように話しているのかわからなくなっていた。  奈央姉の声は、熱い風に乗って僕に届く。 「だって、私達、姉弟なんだから」

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