真夏のコスモス
三 一枚の葉で知る(5)

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「明日の試合遅れないように。それじゃあ、お疲れ様……の前に、待った! 忘れてた! おい待て唐崎!」  ミーティングの想定外の盛り上がりに、一つ最後の伝達事項を忘れていた。  そそくさと帰り始める唐崎を慌てて呼び止める。  最後に、と全員が座り直したことを確認して、仕切り直すように言葉を切った。みんな、僕と一人ずつ話す時間を設けたい、という旨を告げると、皆一瞬ざわめく。ただ噂は微妙に広まっていたようで、案外すぐに静まる。 「今よりももっと好き勝手言って欲しい。誰にも言わないし、僕が知りたいだけ、って気持ちが大きいから……みんな、協力してください」  座りながらだったけれど、頭をぺこりと下げる。もう少し不思議がられるかなと思ったが、はい、と声の揃った低い返事が返ってきて、僕は少し安堵した。  みんなもきっと、僕のことを慮ってくれている。それに甘えてはいけないけれど、いつも監督から言われている感謝の気持ちを部員達にも明確に持って、僕はこのメンバーの先頭に立たなくてはならない。  わかっていることをわかってもらっている、というのは、互いの信頼あってのことだし、僕にとっては本当にありがたいことだった。  解散した僕たちは、いつものように各々帰り道が同じ方向の者同士で帰路につく。  一年生は明日の荷物を再度確認しているようで、僕は部室の戸締まりだけ告げて、先を行く二年生数人の中に混ざった。  帰りながら、僕は河瀬とメッセージのやり取りを続けた。今日のミーティングの内容をシェアしなくてはならない。思ったより遅くなってしまったから先に解散にしたけれど、帰ってから、僕と河瀬にはもう一仕事待っている。 「じゃあなー、明日完封するからなー」  唐崎が呑気な口調で僕らの輪から離れていく。家近くていいな、といつも思う。終わりが遅く、明朝の集合が早い場合、だいたい帰るのが面倒になるのだ。 「おう、よろしくな。遅れんなよ」 「モーニングコールして」 「嫌だよ。守山に頼め」 「俺もやだよ。自分で起きろよ」 「河瀬に起こしてもらうかー」 「誰が頼むんだよ」  そう言うと、誰も何も言えなくなった。話の区切りにはちょうど良く、唐崎は手を挙げて去っていく。やがて、僕達の輪は徐々に小さくなり、お互いがお互いの家へと分散されていく。  最後に残るのは、僕と守山だった。

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