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 声を荒げて吐き捨てる。キートは怒りのあまり、頬を紅潮させた。ポーカーフェイスが板につき、 常に不動心を保っているキートが感情を露わにしていた。本気で腹を立てていた。どうやら薬のせいで、 抑え込んでいた感情に歯止めがかからなくなってしまったらしい。 「キート」 宥めるように差し出されたラザールの手を、ピシャリと跳ね除け、キートは乱れた衣服を整えると ベッドから立ち上がった。キートの、冷静な瞳の中で燃えている炎がラザールを焦がす。 「キート!!」  ラザールは、横をすり抜けて出て行こうとするキートの腕を掴んで引き止めた。 「離してくれ」 「断る」  次の瞬間、ラザールは有無を言わさず手に力を込め、キートを胸に抱き寄せた。 「くそっ…! お前はいとも簡単に俺を陥落する」 「ラザール、離せ」  キートはかすれた声で抵抗を試みるが、手足にまったく力が入らない。それどころか、怒りは急速に 萎み、比例するように身体の欲求が膨れ上がり、痙攣したように震えだす始末だった。 「初めての夜は……お前にとって素晴らしいものになるように……しようと……そう思っていたんだ」    ラザールは弁解がましく言いながら、硬くなった股間をキートの下腹に押し付ける。キートは息を 飲んだ。それはキートを求め、雄々しく脈動していた。 「計画が台無しだ」  ―――計画? 何の……  そう声に出す前に、唇を塞がれた。強くキスされ、キートはベッドに戻される。ベッドの上で、さらに ラザールが激しく唇を重ねてきたので、キートは目を閉じてそれに応えた。キートの唇が開くと、ラザールは 貪るように舌を絡めてきた。喉の奥で低く唸りながら舌を吸われ、キートは朦朧とし、空気を求めるように 喘いだ。ラザールの唇が頬へと移動し、温かい舌が耳の奥に分け入るように滑り込んでくると、キートは すすり泣きのような声を漏らした。 「もう止まらない……お前のせいだ」  ラザールはキートのうなじに指を走らせ、そのままベッドに倒れ込む。彼の情熱のすべてを受け入れ、 互いの思いを遂げるために―――  

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