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◇  数日後、登園すると、モリーさんを肩に乗せた藤田さんと目が合う。 「あ。きみ、ちょっといい?」 「は、はい」  目を細めて、私の胸元を見下ろしていた彼は、納得したように「やっぱ、そっか」と呟いた。  あの紙のこと、気付いてくれたんだろうか? 彼を見上げながらそう思う私に向かって、藤田さんはやっぱり静かに言う。 「きみさ。……あのメモ見たけど。モリーさん、伝書バトじゃないんだから。それに俺、きみの名前教えてもらってないからね。しばらく悩んで、探しちゃったじゃんか」 「あ……。そういえば」  考えてみたら、藤田さんに名前を言っていなかった気もしてくる。さっき彼が見ていたのは、私の名札だったようだ。  いくら接点がないとは言え、受付嬢の名字も知らないのはどうかと思うけど。 「あー。でさ……ずっとこのまま伝書フクロウする感じ?」 「ええと……」  私は口ごもった。別に伝書フクロウがしたいわけではなかった。ただ、藤田さんともっと話がしてみたいだけ。  だけど、そんなこと、面と向かって言えない。 「じゃ、そしたらさ」  そう言って彼は、ポケットから施設案内の冊子を取り出して、差し出してくる。 「ここに俺の番号、書いといたから。よかったら暇なとき、連絡して」  何だか楽しそうに、彼はモリーさんを止まり木に降ろして、去って行く。  本当に、彼は思ったよりもよく喋る。  眠そうに、片方の目をつぶっているモリーさんを見て、私はふっと微笑む。  私はモリーさんに感謝しなくっちゃいけない。取り敢えず、藤田さんと話せるようにはなりそうだから。 「ありがとね、モリーさん」  彼は、聞こえたのか意味が分かるのか、少し首を傾げて目をさらに細めた。  私はすっかり、鳥が好きになっていた。これからもっと好きになるだろう。  ――やっぱりこれも運命なのかな? ―終―

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