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わかるんだ。もう今日が最後の日だって。 僕にはわかるんだ。君との思い出も今日で最後だって。 ねぇ、僕は君に何を残してあげられるかな。 ねぇ、最後にもう一度僕の名前を呼んでくれないかな。 違うんだ。君の泣いてる声じゃないんだ。僕が最後に聞きたいのは。 ねぇ、覚えてる。 君と僕が初めて会った日のことを。 僕はまだ小さくて、君の腕の中で震えていたよね。 ねぇ、覚えてる。 君と僕が初めて一緒に歩いた日のことを。 君も僕も小さくて、はしゃぎ過ぎて遠くまで行って、一緒に迷子になって、ママにたくさん怒られたよね。 ねぇ、覚えてる。 冬の寒い日のことを。 君は僕に抱きついて寝てたよね。寝相が悪くて君はいつも転がっていたね。その度に僕が君の側まで歩いて行ったことを知ってたかな。 そういえば、君はちょっと大きくなって、僕とはあまり遊ばなくなったことがあるよね。 パパがアイツも大きくなったななんて言って、ちょっと寂しそうにしていたよ。 そんなパパはよく僕にこっそりアイスを食べさせてくれたんだ。 口の周りがベタベタになるからやめてって、ママがよく怒ってたっけ。 でも、ママはいつだって僕の心配をしてくれたんだ。僕がちょっと具合が悪そうにしているだけで、いつもリンゴをすりおろしてくれたっけ。僕、ママの作ったご飯大好きだったよ。 ねぇ、覚えてる。 君が初めての彼氏にふられたと目を真っ赤にしていた日のことを。 あの日、君は久々に僕に寄りかかって、ずっとずっと泣いていたよね。君を悲しい顔にさせる人を、僕は嫌いだ。 ねぇ、僕は今、君を悲しませているのかな。それなら僕は僕が嫌いだ。 ねぇ、僕は君との思い出がたくさんあるよ。僕は君のことを忘れられそうにはないよ。 でも、君は僕のこと忘れてもいいんだよ。君のことを悲しませる僕のことなんて早く忘れていいんだよ。 だから、君は泣かないでいいんだよ。 だから、僕のことなんて忘れていいんだよ。 でも、覚えていて。 君のことを、僕はずっとずっと大好きだよ。 僕の言葉は、君には届かないんだ。 君の言葉はいつだって僕に届いていたよ。 とてもとても優しいその声は、いつだって僕に届いていたよ。 とてもとても明るいその声を、いつだって僕は楽しく聞いていたよ。 でも、ごめんね。もうそろそろ君の声が聞こえないよ。 だから、お願い。お願いだから、僕の名前をもう一度だけ呼んでくれる。 僕はきっと前みたいに元気に返事をするよ。僕は君の声が聞こえているよって大きな声で返事をするよ。今までのありがとうをいっぱいに込めて返事をするよ。 ねぇ、覚えてる。 君が最後に僕と散歩をしてくれた日のことを。 僕が歩けなくなった日に、君は僕を抱っこしていつもの道を歩いてくれたよね。 僕は、あの道のどこにだって君との思い出があるんだよ。 花が咲いているねと君は教えてくれたよね。 この道は近道だって僕が君に教えると君は狭いよって笑いながら着いてきてくれたよね。 あの電信柱も、あの坂道も、あの緑の家も、あの公園も、僕には大切な君との思い出。 君は僕にたくさんの宝物をくれたね。 僕は君に何かしてあげられたかな。僕は君に宝物あげられたかな。 ねぇ、泣かないで。ほら、顔を舐めてあげる。いつもみたいに。 あれ、おかしいな。顔がもう上がらないや。 「レオ!!やだ、行かないで!!ねぇ、行かないで!!私、良い友達じゃなかったよね。私、もっともっと遊んであげれば良かったよね。私……私……ねぇ、行っちゃ、やだよ。レオ……!!!!!」 名前、呼んでくれてありがとう。 ごめんね、僕、もう行かなくちゃ。 「わん」 僕はちゃんとありがとうって言えたかな。君の言葉でありがとうって言えたかな。 「ありがとう……私たちと、一緒に、いてくれて、ありがとう……レオ……」 良かった、僕はちゃんとありがとうって言えたんだね。 ありがとう。一緒にいっぱい遊んでくれてありがとう。名前を呼んでくれてありがとう。たくさん話をしてくれてありがとう。僕と出逢ってくれてありがとう。 へへ、ありがとう、っていくつあっても足りないね。 だからね、ほら、もう泣かないで。 あぁ、良かった。今度は顔を舐めてあげられたね。 君はもう泣いてないね。 君の笑顔が僕は大好きだよ。 僕は君に会えて良かったよ。 僕は君のことを決して忘れないよ。 ありがとう。

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