短編集「ショート/オブ/ショート」
シェアリングエコロジー

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なんだって簡単にシェアできてしまう世の中に私たちは生きている。 かつては図書館などで共有されてきた情報というものは、今やインターネットを通じて簡単にシェアでき、あっという間に全世界のありとあらゆるところに拡がる。正しいか否かよりも刺激的かどうかが好まれる。 自家用車を持つのではなくカーシェアという手段で車を共有所有することができる。自転車もシェアする動きもある。交通手段は以前から「アッシー君」という名で共有されてはいたが、昨今は人物を介さなくなる分だけ、効率的になっていると言えるのかもしれない。 また、シェアハウスと言われるように家も共有し、様々な人と一つ屋根の下に暮らす人も増えている。 企業は昔から株式という形で共有され、クラウドファンディングという投資の仕組みも財を共有するという価値観から生まれているようで、空いている土地や空間などをシェアするスペースシェアというサービスもあるらしい。 このように、モノだって、情報だって、財産だって、スペースだって、なんだって共有できるのが今の世の中だ。 それならば、人間だって共有することができて何の不思議もない。 例えば、知能を共有することができる。 試験の時にちょっとだけ他人の答案から答えをシェアさせていただく行為などがそれに当たるだろう。俗に言うカンニングだ。 例えば、腕を共有することができる。 炊事洗濯家事育児。この腕一本を共有することで、なんだってやることができる。残念ながら、私は家政婦ではないし、貴方のママでもない。 例えば、心を共有することができる。 私の心の中には、戸籍上の夫である貴方のスペースの他に、イケメン俳優として名高いキムラタクミが生息している。むしろ、大半がキムラタクミの住処であると言ってしまっても過言ではない。 このように、世の中は今、万物のありとあらゆるものなんだって簡単にシェアできる。 そして、私は今日、新しくシェアを始めたものがある。 正確には、今日よりも一ヶ月程度前になるのだけれど。 私のお腹の中には、遺伝子をシェアした大切な存在が宿っている。 今、私は貴方と命を共有している。 一緒に生きてくれて、ありがとう。

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