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「すべりこみセーフ!!」 二階からお兄ちゃんが降りてきた。 時間は朝の7時30分。 ボクは朝ご飯のトーストを食べていたところ。 日付は9月の1日。 正確に言うと、夏休みは昨日の夜の時点で終わっていたので、「夏休みの宿題」という言葉からするとアウトではあるのだけれど。 ボクはそんなお兄ちゃんを横目に、テレビに目を移す。 今日の天気は晴れ。気温は35度。例え夏休みが終わっても、まだまだ夏は終わってはくれそうにないな、なんて考えながら、トーストの最後の一口を食べる。 お兄ちゃんは「お、早いな。おはよう」とボクに声をかけた後で、「母ちゃん、めし」と言いながら席に座る。 ボクもモソモソとトーストを食べながら「おはよう」と返す。 「母さんはめしじゃないよ」なんて毎朝のやり取りを聞きながら、ボクは麦茶をすする。 「まったく。どうしていつもなんでもかんでもギリギリなのよ」と母さんのお小言が始まる。「夏休みの宿題を昨日の夜からずっとやってるなんて。夏休みの宿題を夏休みの最終日に片付けようとするんじゃないよ」 ボクも二人の会話に耳だけかたむけて、「うんうん」とうなずく。 「でもさー、ちゃんと終わったんだからいいじゃんか。夏休みはお日様の分まで楽しまなきゃいけないんだよ」とお兄ちゃんが答える。 「夏休みは夏休みの宿題をやることも含まれての夏休みなんだぞ」と父さんが加勢する。 「まぁまぁ、でも、ちゃんと学校が始まる前に終わったんだから良いじゃない。それに夏休み夏休み言ってると、夏休みが勘違いしてもう一回始まっちゃうかもしれないよ」 お兄ちゃんは毎年こんな感じで、まるで進歩がない。やれやれと思いながら、ボクはトーストを食べ終えて、歯をみがくために洗面所へと向かう。 ゆっくりと歯をみがいていたら、慌ただしくお兄ちゃんが滑りこんで来た。 「ほぉふ、たへたほ」と歯ブラシをくわえたままのボクが聞くと、「おう」と元気な返事が返ってくる。 お兄ちゃんは、相変わらずご飯を食べるのが早い。 風のようにボクよりも先に学校に行ってしまった。 「相変わらず台風のような奴だな」と父さんが玄関を見ながら呟く。 ボクは玄関の靴棚の上を見ながら言う。 「台風が、夏休みの宿題を持って行くの忘れてるよ。あれ、さっきまでやってた自由研究なんじゃないのかな」 「えー、まったくもう。あの子ったら相変わらずなんだから」と母さんが嘆く。 「やれやれ、だな」と父さんが呆れて肩を竦める動きをする。 「ところで、お兄ちゃんは何を作ったのかな」 ボクは夏休みの宿題を覗き込む。 なんだ、この黒い丸い物体。 題名は「一日で造った地球」だって。 「神様は七日間で地球を造ったと言われているから、丸一日で地球は造れなかった、ということなんだろ」と言い、父さんが苦笑いをする。 「まったく誰に似たんだか」 母さんはハァと深いため息を付き、これ持って行かなくても良いかね、なんて言っている。

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