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もうルスにもバレてしまったのだろう、この思いを。 伝えてくれとお前が言うのなら、俺にはもう、隠す理由もなかった。 「俺は……」 そこまでで、思いが胸につかえて、涙となって溢れ出す。 俺がルスに重ねてきた思いは、口に出すにはあまりに積もり過ぎていた。 「……っ、俺は……お前が……」 ぼろぼろと涙をこぼす情けない俺を、ルスはじっと温かい眼差しで包んで、次の言葉を静かに待っている。 「俺は……っ、お前の事が……ずっと…………す、……好き、だったんだ……」 胸が痛くて張り裂けそうだ。 お前への思いが募り過ぎてて、俺はいつだって苦しかった。 俺はこんなにこんなに、……お前を拗らせてる。 「は?」 ルスの間の抜けた声に、思わず俺も聞き返す。 「……へ?」 ルスは、酷く困惑していた。 「……なんだお前……、俺の事、恨んでるんじゃなかったのか?」 「恨んで……? あ。ああ。あの時の事か? いや、なんで俺がお前を恨む必要があるんだよ」 「だってお前、俺が結婚する頃様子がおかしかったろ? その後も、何度も恋人変えたりして、でも誰とも結婚しなかったし……」 「それで何で俺がお前を恨むんだよ」 「いや、レイも、あいつが好きだったんだろ……?」 「何でそうなる!! 俺は、お前が他の奴と結婚したのが辛かったんだよ!!」 「俺が………………」 「そう、お前が……」 目の前で真っ赤になるルストック。 ……おい、お前、俺の告白ちゃんと聞いてたか?? 「あー…………レイが、俺のことを好きだって言うのは、その……えーと……」 ルスの目が泳いでいる。いや、これは全然考えてなかったな。 こいつ、俺の気持ちまだこれっぽっちも気付いてなかったな!!! くそっっ、自分からバラしただけじゃねーかっ!! 俺は半ばやけくそで叫ぶ。 「そうだよ! 俺は、お前に惚れてるんだ! ずっとずっと前から、俺はお前の事しか考えられねーんだよっ!!」 「そ、そういう『好き』か。……分かった」 自分で確認しておいて真っ赤になるなよ、いやこっちももう真っ赤だけどな。 「ルス……、俺は、お前が欲しくてたまらないんだよ」 「っ……」 ルスがゴクリと喉を鳴らす。 何だよその反応は。アリなのかナシなのか、分かんねぇよ。 「俺はルスに笑っててほしい。その為だったら、何だってするつもりだったし、俺の気持ちなんて、ずっと隠したままでいいと思ってた」 「レインズ……」 小さな黒い瞳が、小さく揺れる。 その瞳から逃れるように、俺は精一杯顔を背けて続ける。 「でも、もう……。もう、限界だったみたいだ……。俺は……もう、お前の親友じゃいられないんだな……」 ぽろり。と零れた涙は、俺の肩を掴むルスの手にかかった。 「レインズ……。すまない……」 ルスの謝罪の言葉に、俺は胸を抉られる。 湧き上がる後悔と、悔しさに、ギリっと奥歯を噛み締めた。 「今までずっと……、お前にばかり辛い思いをさせていたのに。俺は……全く気付かずに過ごしていた」 ルスの声には、深い自責の念が込められている。 「……それは、俺が隠してたんだから、お前が気にするとこじゃねーよ……」 痛む胸を押さえながら、俺は何とかそれだけを告げる。 ああもう、これが最後なんだろうか。 こいつとこんな風に話をすることも、これからは無くなってしまうんだろうか。 俺は、せめて最後にルスの顔をよく見ておこうと、黒い瞳を見つめ返した。 ルストックは、優しく笑っていた。 「お前は……俺に献身的すぎるんじゃないか?」 「惚れた弱味ってやつだよ」 俺は苦々しく苦笑して返す。 「お前の後頭部のハゲもか?」 俺の後ろ頭は、蟻にざっくりやられて傷痕がハゲになっている。 だから、普段はそれを隠すように後ろで髪を括っていた。 「……そうだよ」 俺が渋々答えると、ルストックはまた笑った。 「ははは。そうか」 何でそんな爽やかに笑えるんだこの男は。 じとっと半眼で見返せば、ルスは苦笑して言った。 「いや、お前がなかなか結婚できないのは、そのハゲのせいかと心配していたんだ」 何ていう心配をしてくれてるんだ。 「俺はハゲぐらいあったって結婚できる。……お前さえ、いなかったらな」 「つまり、お前がこの歳までずっと独り身なのは、全部俺のせいだったんだな?」 「……いや、そういう事じゃねぇよ……」 やたら真面目に返してくるルスに、俺はため息を吐きながら答えた。 お前のせいになんてする気はない。 「……俺が勝手に、お前に惚れちまっただけだ……」 「俺が責任を取ろう」 ルスは、落ち着いた声でハッキリと言った。 「……………………は?」 なんだって!? 「俺が、お前を嫁にもらおう」 「…………………………はぁ?」 待て待て待て待て、俺が、嫁なのか!? 違う、そこじゃない、大事なのは、ええと……?? ぐるぐると目を回して混乱する俺を、ルスはそっと胸に抱いた。 「レインズ……今まですまなかったな……」 いやいや、男前過ぎるだろ。 お前、完全ノンケの癖に、俺の気持ちに応えてくれるってのかよ。 動揺を堪えきれないままに、俺はルスの胸で尋ねる。 「い、いいのかよ……、俺は男で、お前も……」 ルスはほんの少し考えてから真面目に答える。 「そうだな……。まあ、お前の両親には、ガッカリされるかも知れないな」 「そんなとこ心配しなくていいから!」 「違うのか?」 キョトンとした顔で見返される。 くそう。俺はお前のその顔に弱いんだよ! 「俺の事……その……受け入れられ、そう、なのか……?」 無理はさせたくないが、できることなら、俺も、その、したい。 「経験は無いが、何事にも最初はあるものだ。これから勉強しよう」 「そうじゃなくて!」 「なるべく、優しくすると誓おう」 「って俺が抱かれる方か!!!」 「……違うのか?」 俺を覗き込むルスの瞳が不安げに揺れる。 「……っっ!!」 ああ、もういいよ!! お前とひとつになれるなら、上でも下でも!! 何か間違ったかと不安そうに見つめてくる黒い瞳に負けて、俺は、その顎を引き寄せた。 ぐいと強引に口付けても、ルスは一瞬身体に力を入れただけで、抵抗はしなかった。 温かくて、分厚い唇。 そっとルスが目を閉じた気配に、俺も目を閉じる。 「ルス、好きだ……」 唇を重ねたまま伝えると、ルスも苦笑の混じった声で答えた。 「ありがとう」 そうだよな、別にルスは、俺の事好きってわけじゃないもんな。 自分の心の声に、俺は自分で傷付いた。 いやでも、心はこれから、好きになってもらえばいいんだよ。 だって、ルスは、俺とこの先も一緒に居てくれるって言ってるんだからな! 心を立て直すと、下半身までもが立ち上がりかけている事に気付く。 そうだよな。惚れた奴との初キスだもんな。当然上がるよな。 俺は、ダメ元で聞いてみる。 「……なあ、今からしてもいいか?」 「ああ。いや、明日は会議が……」 ルスはそこまで言いかけて、思い出したように続けた。 「そうか、来なくていいと言われたんだったな」 言われて、団長の顔が脳裏を過ぎる。 俺たちに、鳥車を手配した上に、明日を午前半休にしてくれた団長の『俺の言う通りだっただろう』と冷たく笑う顔が。 「……なんだよ、結局全部、団長の掌の上かよ」 俺の呟きに、ルスは小さく首を傾げた。 いや、だからそれが可愛いんだよ……。 どこか悔しくはあったが、それでも、団長のその気持ちをありがたくいただく事にして、俺はルスを押し倒した。 後ろへ撫でつけられた黒髪が、ベッドに押し付けられてぱらぱらと数本零れて広がる。 ああ、この髪を、これから俺が乱せるのか。そう思うだけで下腹部に熱が集まる。 ルスは、ほんの少し戸惑うような顔をしていたが、嫌がる素振りは無かった。 「……いいか?」 尋ねると、ルスは少し恥ずかしそうに、小さく頷いた。

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