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俺は、レイの細い顎を引いて、愛を込めて口付ける。 俺の恋人だと言ったこの男は、いつでも美しかった。 俺を大事にしてくれているのは、痛いほどに分かった。 けれど、好きだと言われた事はなかった。 少しずつ戻ってくる記憶のどこを辿っても、レイは俺の親友だった。 レイは、記憶を無くした俺にいつも明るく笑いかけ、優しく口付けた。 けれど、それ以上を求められる事は無かった。 ベッドはどちらの家も一人用で、俺達はソファとベッドに分かれて眠った。 時々、不安になった。 俺の思う恋人と、レイの思う恋人というのは、違うのではないかと。 俺は、レイの他愛ない仕草に、どうしようもなく色気を感じていた。 鮮やかな金髪の伝う首筋に、何度唇を寄せたいと思った事か。 俺が触れれば、レイはこんなに蕩けた顔を見せるのだと知っていたなら。 こんなに愛らしく啼くのだと知っていたなら、俺は毎夜でも襲っていただろうに。 こんな事なら、我慢せずもっと早く襲っておけば良かったのかも知れない、なんて勝手な事を考えながら、俺はレイの口内へ舌を滑り込ませた。 レイの肌は、俺とほぼ同じ環境で働いているはずなのに、俺よりも白く、きめ細かくて、俺よりずっと柔らかい。 唇も俺より薄くて淡い色をしていて、ふにふにと柔らかで、何度でも味わいたくなってしまう。 「……ん、ぅ……」 レイの薄い舌へ、舌をねっとりと絡めれば、レイは小さく震えて可愛らしく喘いだ。 可愛いな……。 胸にじわりと宿る愛は、熱に変わって背を伝う。 レイの中にまだ入ったままの自身に力が戻るのを感じる。 「んんっ」 レイも、その内側で俺を感じてくれたのか、白い肩がびくりと揺れた。 小さく揺らせば、俺の物は温かいこいつの内で次第に硬度を取り戻す。 「ぅ、ん……ん……っ……ん……ぅ」 まだ時折ひくついているレイの内を擦れば、レイは愛らしい声をぽつぽつと俺の口内に漏らす。 金色の睫毛が俺の顔を微かに撫でて、レイが瞳を揺らしたのが分かる。 水音を立てて動く度に、俺の注いだものが、じわじわと伝い落ちてくる。 温かくぬるりと漏れる雫は、俺の尻を伝って、ベッドに染み込む。 シーツは取り替えないと寝られないだろうな。と思いはするものの、こいつの中に、こんなに沢山入ってたのかと思えば、悪い気はしなかった。 「あっ、んんっ、も……、まだ……すんの、かよっ」 ぷはっと唇を離したレイが、それでも甘い声で尋ねる。 視線を下ろせば、レイのそれもまた力を取り戻しかけている。 ……ん? さっきレイは達していたようだが、俺の上にレイの吐精は無い。 前を触っていなかったせいだろうか。 「お前……、中だけでイけるのか? すごいな」 「おっ、お前がっ、あんな……っっ」 レイが見る間に真っ赤に染まる。 その可愛らしい姿に、思わず、俺の胸を暗い感情が過ぎる。 今まで一体、どれだけの奴が、この愛らしい姿を目にしたのか。と。 「お前……俺で何人目なんだ?」 「え……?」 「男の恋人は……」 尋ねると、レイは絶句した。 「……………………は?」 レイは俺の目の前で、赤く染めていた頬を青白く変える。 お前、そんなに急に血を上げ下げして、体に悪くないのか? 「え……? いや、お前……俺の事そんな風に思って……」 「違うのか……?」 俺は今まで、こいつに男と付き合っていると言われた事はなかったが、それは隠していただけなのかと……。 「お……俺はっっ! ずっとずっと! お前一筋だよっっ!!」 間近で叫ばれて、キーンと耳が鳴る。 見れば、レイは絶望にも似た愕然とした表情を浮かべていた。 「……いや、だがお前は今までもたくさんの女性と付き合っていたじゃないか」 結婚話まで進んだ相手も、一人や二人ではなかったはずだ。 不思議なことに、結局なぜか、誰とも結婚はしないままだったが。 「そ……それは……。俺も結婚した方が、お前が安心するかと思って……」 何だそれは。そんな理由では相手だとて迷惑だろうが。 レイは、相手には誠心誠意接していたと弁明する。 まあ……そうだろうな。 レイが女性に優しくないところなんて、逆に想像ができないくらいだ。 何でそう、無駄に辛い思いをしようというのか。 もっと早く、俺に思いを打ち明けてくれれば良かったものを。 そこまで考えて、思い出す。 レインズが、今まで何度も俺に尋ねていた言葉を。 もし、男が告白してきたら、お前はどうするか。とか。 俺は、レインズが男に告白されたのかと思って『そんなの嫌なら断ればいいだろ』なんて答えていた。 そんな風に、レインズは今まで何度も俺に探りを入れて、その結果、俺が一番喜ぶだろう事を、ずっと選んでくれていたのか……。 俺は、これと同じ流れを以前の自分も繰り返していた事を知らないままに、問う。 「ずっと、と言うが、そもそもお前はいつから俺のことを好いてたんだ?」 レイは何故か半眼になって俺を見る。 「俺は知っている……」 ぼそりと呟かれて、怪訝に眉を寄せる。 いや、お前が知らなかったら、他にこの世の誰が知っているというんだ。 「ルスは、せいぜい騎士団に入ったあたりかと予想してるだろ?」 「いや、それは本当に、初期の初期ならと思ったら、だが……」 どうやら俺は、以前にもこいつとこんな会話をやったらしい。 「いいか、…………引くなよ?」 念を押されて、これは重症だなと思う。 一体どれだけ前から、好きだったと言われるんだろうか。 レイは思い出の中の俺を見るように遠い目をして、それをほんの少し眩しそうに細めて言った。 「……十三の時、お前の試合を、見たんだ……」 「十三!? まだ中等部じゃないか!」 驚く俺に、レイは苦笑して言う。 「それ、前にも言われたよ」 十三だなんて、俺はまだレインズの事を何一つ知らなかったのに。 そんな昔から……こいつは……。 「お前の事……。強くて、真っ直ぐで、優しそうな奴だと思ったんだ。……もうあの頃からずっと、俺はお前の姿ばっかり追いかけてたんだな」 ぽつりぽつりと、振り返りながら呟くレイの言葉には、愛が滲んでいる。 「あ、ええとな……、その、お前が責任感じる必要はないんだけどな? ええと……」 レイは俺の目の前で、あたふたと次の言葉に迷う。 何だその前置きは。 ……まさか。 いや、そんな。まさか……?

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