夏草の萌える頃
第三十五話

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 中二の冬。  今回よりは短かったけれど、薫はその年の冬休みのほとんどを、病院で過ごした。その時はさすがに心配で、なんどもお見舞いに行きたいとごねた。でも結局は、意固地なまでの薫の拒否に屈して、行くことは叶わなかった。  反抗期真っ盛りの、何にでもケチをつけたい年頃だった。納得したつもりでいた不満が暴走して、退院したばかりの薫を問い詰めていた。 「見舞いが嫌だなんて、おまえおかしいんじゃないか?」 「あぁ?」 「友達だったら、見舞いに行くのが当たり前だろう。それを、逢いたくないの一点張りって、どういうことだよ。俺はおまえにとって、そんなにウザイものなのか?」  子供じみた卑屈さで、薫を責めた。  退院したとはいえ、未だ外出禁止の薫は、ベッドの上に積み上げられた枕に寄りかかった格好で、裕也を見下ろしていた。その瞳が、冷ややかに細められた。 「おまえの当たり前って、どっから持ってきたんだ?」 「えっ?」 「だから、見舞いに行くのが当たり前だなんて、どんなお気楽な病人なんだって聞いてるんだよ!」  剣の篭った口利きに、高ぶりだした感情が見えて、裕也がぐっと言葉を飲み込む。  言いたいことは山ほどあった。でも、興奮させることが薫にとってどれだけ負担になるか、よく知っていた。だから、幼い感情を、必死で押さえつけていた。 「……俺の病室が、いつも決まってるのは、なんでか知ってるか?」  問いかけながら、薫は答えを待つことをしない。 「俺の病室にはな、家族と病院関係者しか入れないんだよ」 「えっ?」 「だから、常に面会謝絶の患者に見舞いだなんて、能天気なことぬかすなって言ってるんだよ!」

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