夏草の萌える頃
第二十五話

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「これはさっきの問題と一緒の公式だよ。当てはめてみ」 「えっと……、どれだっけ?」 「これ」  薫が奇天烈な公式をさらさらと、直己のノートに書き込む。 「あっ、そうか!」  ピンと来たらしい一声は、直己のもの。残るふたり、裕也と渡会はそろって首を傾げている。 「あんなの、習ったか?」  覚えがなくて、独り言みたいに呟いた裕也の目の前が、バンという音と共に真っ暗になる。 「いってぇ!」  裕也の顔に命中して、パサリと落ちた参考書は「高校一年生」のもの。開かれたページには、たった今、薫が書いた公式がデカデカと載っている。 「何すんだよ!」 「お気楽なこと言ってるからだろ? こんな基本の公式も覚えてないなんて、おまえ、受験勉強ちゃんとしてるのか?」 「だったら口で言えよ! あーっ、鼻いてぇ」  眩い陽射しが窓いっぱいに射し込むそこは、町営図書館。せっかくの休日に、いつもの四人は珍しく、雁首そろえてお勉強中。  そもそものきっかけは、直己の半べそ電話。期末試験の追い込み中に、どうしても解けない問題にぶち当たって、薫に泣きを入れてきたらしい。それじゃ、どうせならと、図書館を指定したのは薫。で、ついでにといった感じで声をかけられたのが、裕也と渡会だった。

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