みらいロボットの夢
エピソード4 第2話 ダフ屋弁護士?

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 その日の午後、視察を終えて帰社すると、 オフィスが入っている高層ビルのエントランスに、取材陣が待ちかまえていた。 「今川社長。不法投棄された産業廃棄物が、 埋められていた山中で発生した山火事の第1発見者となったそうですが、 近年、増えているロボットの不法投棄についてどうお感じですか? 」  新聞記者やワイドショーのリポーターたちが、 今川たちを見つけると集まって来た。 2人は駆けつけた警備員にガードされながら、 到着したエレベーターに急いで乗り込んだ。 ドアが閉まる直前、 何者かが、ドアが閉まるのを阻止して強引に乗り込んで来た。 「ちょっと、危ないじゃないですか」    磯屋が、駆け込み乗車した人物に文句を言った。 その人物をよく見ると、 グレーのスーツに身を包んだ大内望月だった。 今川たちに気づかれないよう、ビジネスマンに扮したらしい。 「介護ロボットの件は済んだはずですけど、 まだ、何かあるのですか? 」    今川は、大内から反射的に目を反らした。 ただでさえ、気分が悪い時に、 神経を逆なでする天敵に会うなんてついていないと思った。 「介護ロボットの事故の次は、ロボットの墓場の火事ですか。 こうも偶然が重なると、気味が悪いよな」    大内が皮肉った。 「あなたには関係ないでしょう」    今川は、エレベーターが開いた途端、 大内を押しのけるようにして外に出た。 「もしかして、不法投棄されていたのが、 リサイクルにまわされるはずの ロボットだということに、気づかなかったのか? 」    大内が、今川の横に並ぶと訊ねた。 「それは本当ですか? 」    今川は思わず、訊き返した。 ロボットの原型をとどめていなかったことから、 ロボットだとは気づかなかった。 「あの場所は、ロボットの幽霊が出ることで 有名な心霊スポットなんだ。もしかしたら、 ロボットの霊が、おたくら、2人を導いたのかもしれんぞ」    大内が鼻息荒くして言った。 「笑わせないでください。 ロボットが、幽霊になるはずがないじゃないですか?  小さな子でもわかることだ」    今川が言った。 「大事に使ったものには、 念が宿るというのを知らないのか? 幽霊騒ぎについて、不法投棄されたロボットの 怨念のしわざだと分析する専門家もいる。 昔から、産業廃棄物の不法投棄は、大きな社会問題とされてきた。 近年は、ロボットの不法投棄が増えて来ている」    大内が真面目な顔で告げた。 「法の抜け道があるから、不法投棄が止まないのですよ」    磯屋がため息交じりに言った。 「ロボットの最期まで責任を持つことこそ、 ロボットを世に出した人間の務めだと思うがね」  大内が冷ややかに告げた。 「説教をするために、わざわざ、訪ねて来たのですか? 」    今川が言った。  説教はうんざりだと思った。 リサイクルやスクラップは、 信頼出来る専門業者に依頼している。 今まで、その方法でトラブルが起きたことはない。 「おたくが、先日、急死したロボットクリエーターの 石川六右衛門氏について調べていると知って、 情報を持って来てやったというのに、 そんなに、けむたそうにしなくても良かろう」    大内が、苦笑いして言った。 「どんな情報ですか? 」    今川が、大内に用心深く訊ねた。 「石川氏の遺体は、クライオニクスの団体から 派遣された人間により持ち去られたという噂がある」    大内が、噂の出所とされる某スポーツ紙を見せた。 「クライオニクスとは、いったい、何のことですか? 」    今川が、大内に詰め寄った。 「クライオニクスというのは、 現在の医療では、治癒困難な病気の人体を冷凍保存して、 未来の医療の進歩に託すサービスのことをいう。 日本では少ないが、アメリカやロシアなどでは、 多くの著名人が登録しているらしい」    大内が答えた。 「証拠はあるのですか? 」    今川が、大内に訊ねた。 これまでの大内の発言を考えて、 信用しがたい情報だ。 「おたくは、石川氏のことをどこまで知っている? 」    大内が訊き返した。 「大内弁護士。社長に、 そんなことを聞くなんて失礼ですよ」    磯屋が言った。 いつになく、興奮しているように見えた。 「石川氏は、起業を後押しくださっただけでなく、 会社が、軌道に乗るまで資金を提供してくださった。 私が今、こうしていられるのも、あの方のおかげです。 これでも、私なりに、石川氏の人となりは、わかっているつもりです」    今川が答えた。 今川は学生時代から、自分を理解して支援してくれる恩人には恵まれて来た。 天涯孤独の身だった自分が、会社を興して成功した。 佐目教授が、今川の才能を伸ばして、 石川氏が、今川の夢を叶える手助けをした。 2人は、今川にとって大恩人なのだ。 「僕が、石川氏のことを調べている理由は、 石川氏が亡くなった日の夜。 石川氏の自宅周辺で、UFOの目撃情報があったからだ。 おたくとは違って、浮ついた動機のように思われるだろうが、 いたって、まじめだ」    大内がきっぱりと言った。 大内は何が何でも、石川氏の死をUFOと関連づけたいらしい。 UFOの目撃情報があったというだけで、 石川氏の身辺を探るとは、正気の沙汰とは思えない。 「それで、何かつかんだのですか? 」    今川は、オフィスのドアを開けると、大内を招き入れた。 「毎年、石川氏が生前、弥勒ボートという名の 研究所に多額の寄付をしていたことがわかった。 問題は、一企業のロボットクリエイターに、 おたくの会社に資金提供したり、 研究所に多額の寄付が、本当に出来たのかということだ」    大内が神妙な面持ちで言った。 「もしかして、石川氏の懐事情を疑っているのですか?  石川氏は、ロボットクリエーター界のマエストロと呼ばれた人物です。 一企業に籍を置く傍ら、個人的に依頼された仕事をこなしていれば、 それなりの資産を得ることは可能でしょう」    今川は、疑問を打ち消そうとしながらも、 心の底には、大内の指摘はあながち、間違っていないと思った。  実は、今川自体も、ありがたいと思いつつも、 どのように、資金を工面しているのか気になっていた。 いつか聞こうと考えているうちに、石川氏が逝ってしまった。 「それと、あと、もうひとつ、気になることがある」   「ストップ! これ以上、社長と石川氏との間の 思い出をあなたの憶測で穢すのは、やめていただけませんか? 」  大内が何か言いかけようとしたが、磯屋がそれを制した。 「考えてもみろ。最先端の医療設備が整った 総合病院の全国展開を一企業が、 一任されること自体がありえない話だろうが?  世間では、石川氏の功績が信用材料となったと理由づけられているが、 自律型ヒューマン支援ロボットを製作している企業は他にもある。 言うなれば、おたくの会社にも、チャンスがあったはずだぜ」  去り際、大内は、意味深な言葉を言い残すと、 磯屋の腕をすり抜けるようにしてオフィスから出て行った。    

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